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ビギナー向け バラの育て方

ビギナー向け バラの育て方

バラを育ててみたいけれど、難しそう……というイメージをもたれがちですが、近年は品種改良が進んで、育てやすく手間のかからないバラが増えています。ここでは、ハイブリッドティ、フロリバンダに絞って、ビギナーにも分かりやすく、バラ栽培の基本をご紹介します。

ハイブリッドティの特徴と性質

ハイブリッドティは、ハイブリッドパーペチュアルとティーローズの交雑によって生じた、四季咲き大輪の系統で、花径が15pを超えるものもあります。この系統は、1867年に発表されたラ・フランスから始まりました。花色、花形、香りはさまざまで花が大きく見応えがあり、一輪一輪を真近で観賞する系統です。

  • プリンセス ドゥ モナコPrincess de Monaco(フランス メイアン 1981年)
    大輪の半剣弁高芯咲きで、クリーム白地にピンクの覆輪が入る。濃緑色の照葉で美しい。モナコ公国王妃グレースケリーに捧げられたバラとしても有名。
  • イングリッドバーグマンIngrid Bergman(デンマーク ポールセン 1984年)
    数ある赤バラの中で花色、花形、花弁数、花茎、花つき、樹形など、現在この品種に優る赤バラは見当たらないほど完成度が高い。少々夏の高温に弱いので、夏は水をよくやることが大切。花名はハリウッドの女優、イングリッドバーグマンに由来する。2000年、世界ばら会連合殿堂入り。
  • ピエールカルダンPierre Cardin(フランス メイアン 2008年)
    サーモンピンク地に紅の霜降りの絞りが、花弁全体に入る非常に珍しい品種。しっかり花弁を巻いた剣弁高芯咲きになり、巨大輪に咲いて花つきがよく、ダマスクの香りを漂わせる。枝は直立性で若木の時は細立ちだが、生長とともに枝が太くなっていく。花名はフランスの有名なデザイナーに由来。
  • ヨハネパウロ2世Pope John PaulU(アメリカ J&P 2008年)
    数少ない純白の半剣弁高芯咲き。大輪種でフレッシュシトラスの香りがある。花つきがとてもよいうえ、株の生長が早く、年々こんもりとした枝葉が茂る。花名は第26代ローマ法王、ヨハネパウロ2世に由来。

フロリバンダの特徴と性質

ポリアンサ系統と、ハイブリッドティ系統の交雑により生じた、四季咲き中輪房咲きの系統です(大輪に近い品種や、房にならず単花咲きの品種もある)。花色や花形はさまざまで、花数は多く、樹高はハイブリッドティに比べ低いのが特徴。株一面に咲く花を、遠目から観賞するタイプです。冬の剪定は、細い枝を多く残し、やや高めの方がより花数が増します。

  • ボレロBolero(フランス メイアン 2009年)
    花はロゼット咲きで10〜12pほど。中心が淡いピンクで外側につれて白地になる。香りが強く、若木のうちから花が特別よくつく。耐病性がありとても丈夫なので、特にビギナーにおすすめの品種。鉢栽培でもよく咲き「香りがよく、花つきがよく、丈夫」の三拍子が揃った人気品種。
  • アイスバーグIceberg(別名シュネビッチェン)
    (ドイツ コルデス 1958年) 古くから世界中で愛され続けている、名花中の名花で、株いっぱいに白い房咲きの花が覆いつくす。枝は若木の時は、青軸で細立ちだが、年々かたく松肌のようになり、長く生長する。暖地での冬の剪定は、細い枝を多く残せば、より花つきを増やせる。病害虫の発生は見られるが、樹勢がよいので早く回復できる。1983年、世界ばら会連合殿堂入り。
  • プチトリアノンPetit Trianon(フランス メイアン 2006年)
    丸弁のロゼット咲きで、花色はライトピンクで美しく、数輪の房咲きとなり、花つきがとてもよい。枝葉がかたく丈夫で、耐病性、耐寒性に優れている。シュートが出にくいタイプの品種だが、枝の寿命がとても長く、年々太って生長していく。花名は、マリーアントワネットの離宮プチトリアノンから。
  • クリーミーエデンCreamy Eden(フランス メイアン 2005年)
    本来はスプレー咲きの切り花品種として流通している品種だが、丈夫なうえに花形がカップ咲きでかわいいため、庭園バラとして登場した。緑色系の花が一茎に5〜10輪ほどの房咲きになる。とても花もち、花つきがよい。あまりに花もちがよいので、花がら摘みが遅れてしまいがち。次の花を咲かせるために、遅れないようにしたい。

購入苗の植え付け

購入苗の植え付け(図)地植えの場合:10月〜翌年2月の間に苗を入手した際、購入した苗がポットに植えられている場合は、芽が動いていることがあるので、根鉢を崩さずに植え付けます。裸苗の場合は、反対に山形に盛った土の上に、根を八方に広げて植え付けます。植え穴に堆肥5L、油かす200g、骨粉200gを混ぜ込んでおきましょう。
植え終わったら水を十分与えます。午前中に行うことがポイントで、午後に植えた場合は、翌日の午前中に水やりします。水が引いたら、レーキなどで平らにならしましょう。
さらに防寒対策をしておきます。柱を3本立てて、上で3本をクロスしてヒモで固定してください。そこへ不織布を2枚くらいに重ねて柱を覆います。袋状の不織布をかぶせてもかまいません。サクラが咲く直前まではこのままにし、芽が1pほど伸び始めたら取りましょう。
その後、芽が出ても追肥は不要で、水やりは凍結のなくなったころ、暖かい日の午前中に行います。病気が発生する原因になるので、枝には水をかけず、株元に行いましょう。
鉢植えの場合:8号程度の鉢にゴロ土を3pほど入れ、市販の培養土または赤玉土7、ピートモス2、パーライト0.5、くん炭0.5を配合した用土を使って植え付けます。購入した苗の芽が伸びている場合は根鉢を崩さずにそのままで、芽が伸びていない場合は地植えの裸苗と同様に土を崩して根を広げて植え込みましょう 。

鉢替え

鉢替え(図)2月中下旬に行います。前年まで育てていた株が大きく育って、窮屈になった場合、8号鉢から9〜10号鉢に植え替えます。鉢の素材は軽量で扱いやすく、乾きにくいプラスチックがおすすめです。株を鉢から抜き、根鉢の周りの土を2割ほど落とします。少々根を切ってもかまいません。同時に地上部の枝も剪定します。鉢底にゴロ土を3pほど入れ、市販の培養土を使って植え付けます。用土を竹箸などでつついてすき間なく入れ込みましょう。植え終わったら、水やりします。水が引いたらさらに与えることを3回繰り返します。その後の水やりは、気温に注意し、暖かい日を選んで午前中に済ませます。枝には水をかけないことが大切です。

水やり

不適切な水やりは枯らす原因のトップといえるので、適切に与えることが大切です。
地植えの場合:特に気をつかうのは、植え付けたばかりの苗木です。あまりに地面が乾いている場合や発芽が遅れている場合は、水を与える必要があります。晴れた日の午前中に、気温よりやや温かめの水(ためておいた水ではないこと)を5L程度与えましょう。
鉢植えの場合:土の表面が乾いたら与えるのが基本ですが、翌日に大きく凍結する恐れがある時は、翌日に延ばすか、それができないほど乾いているのであれば、コップ1杯など少量で我慢させ、晴れた日に鉢穴から水が流れるほど与えます。サクラが咲き終わるころになると、急に生長が始まり用土が乾燥しやすくなります。このころは午前中は暖かくても、午後からは雷雨になることがよくあります。天気予報を確認して水を与えてください。雨の場合は仕方ないものの、病気の原因になるため、水やりは絶対に葉や枝にかけてはいけません。5月になって蕾が大きくなるころは、気温が上昇するので、水をどんどん与えてください。

施肥

植えの場合:元肥を入れずに植えた場合を除き、追肥は行いません。元肥を施さなかった場合は、発芽確認後にボカシ肥または完熟有機肥料を数カ所、土の中にすき込みます。
鉢植えの場合:発芽確認後に油かすに骨粉入りの固形肥料を、11月上旬ごろまで毎月与えます。キャラメル大の固形肥料なら8号鉢に2個が目安です。蕾が見えるころになれば、液肥も与え始めるとさらに株が充実します。
庭植えも鉢植えも、翌年の冬には寒肥を与えます。

花がら摘み

花がら摘み(図)花が終わったら、株を消耗させないためにも、速やかに花がらを切り取りましょう。ただし、ハイブリッドティもフロリバンダも深く切りすぎないことが大切です。
ハイブリッドティは、一番大きい5枚葉の上で切り取ります。フロリバンダは花が終わった順に一輪一輪花首から切った後、最後に房の下で切り取ります。
10月中旬ごろから秋に咲く花は、花首から切り取ると、暖冬の場合はわき芽から蕾が出てきます。秋にたくさん咲かせるほど翌年春の株が充実するので、その花は咲かせて、もうしばらく楽しみましょう。

病害虫

春先から、アブラムシ、マイマイガ、ダニ、コガネムシ、カミキリムシなどが主につきます。特に注意したいのは、9月中旬から10月にかけて発生するオオタバコガで、蕾が見えるころから発生します。がくに産卵するので、見つけ次第指でかき落とします。また、幼虫にはプレオフロアブルを散布します。
病気は真夏以外はうどんこ病が、夏は黒星病が発生しやすくなります。

ベーサルシュートの仕立て方

ベーサルシュートの仕立て方(図)ベーサルシュートは、株元から発生する、力強い枝のことをいいます。このベーサルシュートが発生して、まだ蕾が確認できるかどうかという時点で、上から3枚くらいの葉をつけて指で摘み取るソフトピンチを行います。
一番花が終わった後、3回に分けてピンチします。9月以降は秋の花を咲かせる準備が始まるので、行わないようにしましょう。

夏剪定

夏剪定(図)9月1日から10日くらいの間(関東基準)に、葉がよくついている株には夏剪定を行います。葉を落としてしまっている株は、先端を少し切る程度にとどめます。
ハイブリッドティの場合、2番花(枝)と3番花(枝)の枝で切ります。早く咲いた枝は、3番花で切りましょう。葉を多く残すことで芽出しの力が蓄えられ、耐寒性も高まるため浅く切ることがポイントで、深切りしてはいけません。枝の中にあるふところ枝と呼ばれる枝も、切らずにそのままにしておきます。切り方はハイブリッドティもフロリバンダも、基本は2番花や3番花を混ぜて切ります。フロリバンダは特に、花つきを重視するため、3番花で切ったほうがよい結果が得られます。バラの内側にある枝は、切らずにそのままにしてかまいません。
鉢栽培の場合、庭植えと基本的には同じですが、極力浅めに切りましょう。フロリバンダは枝を多く残すことを意識してください。
剪定後はこまめな水やりが大切です。からからに乾くと、新芽が出てこなくなります。

台風対策

台風対策(図)台風が来るからといって、慌てて対策を講じるのではなく、毎日の手入れの中での備えが大事です。まず一番は、丈夫で元気な株作りから始まります。水やり、施肥はやりすぎない、土壌改良もそこそこにする、安直に支柱を立てて軟弱な株にしない、などをいま一度考えてみてほしいと思います。
ブッシュローズのベーサルシュートは、蕾が見える前にソフトピンチ(新芽または枝がやわらかい状態で、浅く摘むこと)し、房には咲かせません。房になると風の抵抗をもろに受けやすくなり、また房に咲かせると表皮だけがかたくて、内が充実できないのです。そのため、余計に台風などの害を受けやすくなります。
このように対策をしていても台風は特別です。アーチやスタンダードに仕立てている場合は、資材自体が折れないように、十分な備えをしましょう。

成木までの剪定

成木の定義はいろいろありますが、まず年数では、植えてから3年くらいの株をいいます。それまでは、6〜9月に発生するベーサルシュートを少し切る程度でよいでしょう。イラストにまとめたので、成木までの剪定の参考にしてください(品種や系統によって育ち方は変化しますが、標準的なイメージとしてまとめました)。

成木までの剪定(図)
栽培カレンダー
鈴木 満男
鈴木 満男 1950年、岩手県生まれ。京成バラ園芸にて、バラ園の管理や育成の技術指導を行い、そのキャリアは約40年。講習会を行うほか、バラに関する著書も多数で、多方面にわたって活躍している。