小山内 健 (おさない けん)
タキイ園芸専門学校卒業後、京阪園芸に入社。京阪ローズソムリエ(バラ鑑定士)としてNHKテレビ「趣味の園芸」への出演、各地のセミナー、執筆活動など、多方面で活躍中。バラの栽培法、楽しみ方について楽しく分かりやすいアドバイスで人気。「とっておきのバラづくり」(家の光協会刊)など著書多数。
バラは大きく分けると、「木立性」と「つる性」があります。木立性には春から秋まで咲く「四季咲き」が多くあり、大輪咲きの「ハイブリッドティー・ローズ」や、房咲きの「フロリバンダ・ローズ」がこれに当たります。これらは「咲き終わったら枝を切り戻す」を繰り返すことで、枝に力がみなぎって元気になり、次々と花を咲かせることができます。特に、冬の間に枝を切り戻す「剪定」は、バラを1年間すくすくと元気に育てるためにとても大切です。木立性には「剪定」、つる性は「剪定」と枝を曲げて形をつくる「誘引」、これが春に美しい姿で花を咲かせる大きなポイントです。
ハイブリッドティーの起源は、1867年に作出された「ラフランス」から。春から秋まで花を楽しめる「四季咲き性」で、ブルーベリーやツバキと同じく「木立」に育ち、花の大きさは10〜14cmほどの大輪咲きになります。この花の大きさゆえに、遠くからでも一目で分かるほど存在感があり、切り花にして1輪を花瓶に挿しても美しさが際立つほどです。そのため、バラをメインとしたい庭では、最も必要なバラとなります。さまざまな色彩、そして花形をした品種がこの系統にはあり、世界中で愛される「主役のバラ」として現在に至ります。
「ピース」
「イングリッド バーグマン」
ハイブリッドティーの剪定時期は1〜2月までで、バラの活動が最も鈍くなる厳寒期に行います。バラを完全に休眠させるため、剪定の1〜2週間前に、葉を全部むしっておきます。剪定は株全体の高さの2分の1〜3分の1を残して、バッサリ切りましょう。次に枯れ枝、病気の枝、傷んだ枝、弱った枝を全部切り捨てます。そして、鉛筆より太い枝だけを残し、さらにそこからやわらかい枝、重なりあう枝も、付け根から切り捨てます。特にハサミを入れて抵抗なく切れてしまうやわらかい枝は、どんなに太い枝でもほとんどの場合、まず咲かない枝です。惜しまず切りとりましょう。株全体の形が整うように切ることも大切です。
フロリバンダの起源は、1909年に作出された「グルース アン アーヘン」から。春から秋まで花を楽しめる「四季咲き性」で「木立」に育ち、花の大きさは5〜8cmほどの中輪咲きになります。花つきがとてもよく、時には1枝で20輪以上の大房で咲くこともあります。このため庭や玄関先などで育てると、パーッと明るく華やかな印象となります。花の色彩についてはハイブリッドティー同様、とても多彩です。近年では、可憐で優しい感じのあるバラも多く作出されるようになり、女性層を中心にとても支持されています。
「プリンセス オブ ウェールズ」
「アンネのバラ」
フロリバンダの剪定は、ハイブリッドティーと同じ時期に行います。葉をむしる工程も同様ですが、残す枝の太さだけはハイブリッドティーと異なるので気をつけましょう。
まず、バラを完全に休眠させるため、剪定の1〜2週間前に葉を全部むしっておきます。剪定は株全体の高さの2分の1〜3分の1を残して、バッサリ切ります。次に枯れ枝、病気の枝、傷んだ枝、弱った枝を全部切り捨てます。そして割り箸より太い枝だけを残し、 さらにそこからやわらかい枝、重なりあう枝も、付け根から切り捨てます。特にフロリバンダは枝数が多くなる傾向があり、重なりあう枝、やわらかい枝もたくさんできます。このような枝は病害虫に侵されやすいので、同様に切り捨てておきましょう。割り箸ほどの枝でも花が咲くため、それより細い枝をすべて切り捨てます。最後には、株全体の形が整うように考えながら切ることも大切です。
株が病害虫で傷んでしまった場合は、深く剪定することで株元の根を活性化させ、回復に導くことができます。また、春に向けてどの株も一度低くしておくと、日光が均等に当たり、株の優劣を解消させることもできます。
剪定を終えて1〜2カ月もすると、新芽が伸び出します。通常は枝先ほど新芽が伸びますが、芽が元気に伸びないこともあります。放任しておくと、あとで枯れ込んできたり、病気の温床となるケースがよくあるので、元気に伸びる新芽の上で切り戻しておきます。またこの時、芽がまったく吹かない枝があるなら、それは春になっても咲かない枝です。付け根から切りとっておきましょう。
枝がぐんぐん伸びていくバラを「つるバラ」と呼びます。春にたくさんの花を咲かせる特性がありますが、春以降は枝を伸ばす方にエネルギーが使われやすく、1年で2〜3m以上、品種によっては4〜5mも生長します。このためフェンス、アーチ、オベリスク、壁面などに仕立てることに適しています。
つるバラを仕立てる場合、枝を切る「剪定」と、枝を曲げて這わせる「誘引」を同時に行います。特につるバラは、水平方向に曲げた枝ほどよく花が咲き、真っすぐ上に伸ばした枝ほど花が咲きにくい性質があります。この作業は、枝が休眠を始めようとする12月〜翌年1月ごろが最適で、ハイブリッドティー、フロリバンダより1カ月早めに行うのがおすすめです。寒すぎると枝がかたくなってしまい、枝が曲がりにくくなるからです。
また、バラは枝の上部に集中して花が咲くので、枝が立ったまま放置しておくと、人の背丈をはるかに越えた位置で咲いたり、あまり咲かなくなります。咲かせたい位置にたくさん花を咲かせるための作業が冬の剪定、誘引なのです。
全体的にナチュラルに咲かせたいなら、古枝から伸びる小枝をメインに仕立てます。小枝は数こそありますが、平均的に勢いが弱く、やや小さな花が咲きやすい傾向があります。特に太く元気に伸びている新しい枝(シュート)だけを残し、これを配置されていない部分に誘引します。残りの枝は短めに切り揃えておきます(長さにして5〜10cm。芽数1〜2芽)。この時、まったく不要な枝(枯れ枝、病気の枝、傷んだ枝、弱った枝)などは、全部切り捨てておきます。
小輪咲きのタイプや、枝が細くて枝垂れやすいタイプ、太く元気なシュートが出にくい品種にも適した剪定方法です。
全体的にボリュームたっぷりと咲かせたい場合、元気に伸び出している新しい枝(シュート)をメインに仕立てます。新しく元気な枝からは、元気な芽が伸び出して、大きな花がたくさん咲きます。古枝はなるべく切り捨て、その空いた部分に、新しい元気な枝を寝かせて誘引しておきます。またこの時、まったく不要な枝(枯れ枝、病気の枝、傷んだ枝、弱った枝)などは、全部切り捨てておきます。
この方法はすべてのつるバラに適していますが、特に大輪咲きタイプに高い効果が現れます。
枝が多いと、全部を誘引してしまおうとして、ついつい枝と枝の間隔を狭くしてしまいがちです。間隔が5cmも開かない誘引の仕方では、春までに茂りすぎて日照不足となり、かえって蕾がつきにくくします。4月ごろまで伸びた枝先にじっくり日差しを当てて、芽を充実させることが5月に花をたくさん咲かせる重要なポイントになります。
枝の太さが鉛筆以下なら「こぶし」程度、指のように太い枝なら「手のひら」程度の間隔を空けると、5月ごろまで各枝に、じっくり日差しが当たります。
なお、枝を誘引していく際、枝と枝が重なり、一部が交差することがありますが、これは問題ありません。気にせず交差させて、誘引していきましょう。
まず、葉をすべて取り払っておきます。これは均等に寒さを受けさせるためで、同時に日光も均等に当たるため、花が一斉に咲くようになります。次に枯れ枝、病気の枝、傷んだ枝、弱った枝をすべて切り捨てます。
タキイ園芸専門学校卒業後、京阪園芸に入社。京阪ローズソムリエ(バラ鑑定士)としてNHKテレビ「趣味の園芸」への出演、各地のセミナー、執筆活動など、多方面で活躍中。バラの栽培法、楽しみ方について楽しく分かりやすいアドバイスで人気。「とっておきのバラづくり」(家の光協会刊)など著書多数。