ラッカセイ特集

ラッカセイは南米原産で、コロンブスによるアメリカ大陸の発見を機に世界に広まった野菜の1つです。エネルギー量は100gで562Kcalと、米(精白米)をはるかにしのぐ高カロリー。高たんぱくで、オレイン酸やビタミンB群も豊富です。日本には江戸時代に中国を経由して入ってきたので、積み出し港の地名をとってナンキンマメと呼ぶこともあります。
ラッカセイのマメのでき方は、とてもユニークです。受精後、花のつけ根にある子房柄という部分が長く伸びて地中に潜り込み、先端がふくらんで莢ができます。この様子から「落花生」という名前がつきました。沖縄では「地豆」と書いてジーマミといいますが、これもマメの育ち方からついた名前です。

栽培のポイントは2点。十分に気温が上がってからタネまきし、生育の初期は鳥害を防ぐこと。もう1つは、子房柄が潜り込む前に土をやわらかくしておき、潜り込みが始まったら中耕をしないことです。マメのでき方からわかるように、「潜り込みの邪魔をしない」ことが大事です。
粒の大きい品種が人気。ゆでラッカセイ向きで大粒の ‘おおまさり’がおすすめです。薄皮が黒い「黒落花生」も、見た目のユニークさで人気上昇中です。

コンテナは、培養土が25L程度入る、30×80×25cm程度の大きくて深さのあるものを利用します。鉢底ネット、培養土、移植ゴテ、ジョウロ、鳥害予防のための不織布または防虫サンサンネット、洗濯バサミなどをそろえます。

タネまきの時期は4月下旬〜5月中旬です。高温性の野菜で寒さに弱いので、気温が高くなってからタネまきします。

本葉3〜4枚になったら、化成肥料10gをコンテナ全体にまきます。以後、2週間に1回の割合で同量を追肥し、土寄せします。
花が終わる前に、土をやわらかくして子房柄が潜り込みやすい環境を整えます。移植ゴテで耕して株元に土寄せします。潜り込みが始まったら、中耕は終了。追肥は、土の表面にばらばらとまくだけにします。乾燥が続くと莢の肥大が悪くなるので、十分に水やりしてください。
9月下旬〜10月中旬になって、葉が黄色く枯れ始めてきたら収穫です。根元を探って試し掘りし、莢の網目がくっきりと浮き出てきたら、株ごと引き抜きます。土中に莢が残ることがあるので、よく探します。
ほぼ無農薬で栽培できます。アブラムシやカメムシを見つけたら捕殺します。
ラッカセイのタネとは、マメのことです。「はとぽっぽ」の歌詞を思い出すまでもなく、マメはハトなどの鳥の大好物。特にねらわれやすいのは、水を吸ってやわらかい状態のタネです。防除対策をとらないと鳥に食べられてしまうので、タネまきの直後から防虫サンサンネットなどをかけて守ります。本葉2〜3枚になれば、外しても大丈夫です。

ラッカセイの簡単な食べ方は、「ゆでる」と「炒る」の2つ。食感に違いがあって、どちらも独特のおいしさがあります。特にゆでラッカセイは鮮度が大事、とれたてが食べられる家庭菜園に向いている利用法です。


恵泉女学園大学 人間社会学部 人間環境学科教授
秋田県生まれ。恵泉女学園大学 人間社会学部 人間環境学科教授。専門は野菜園芸学、植物育種学、農業教育学。「NHK 趣味の園芸」講師などで野菜作りの魅力を伝える。著書に「別冊NHK趣味の園芸・わが家の片隅でおいしい野菜を作る」(NHK出版)など多数。