ヒッペアストラムとキルタンサス



ヒッペアストラムとはアマリリスの正式な学名です。アマリリスはプラスチックのポットにあらかじめ植え付けられた状態のものや、見事に開花した鉢物として、冬場によく出回ります。それらはクリスマスに向けた商材として、品種改良と栽培技術を研究された結果で、大輪の華やかな品種がたくさん作られています。 |
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植え付けは最低気温が5℃より高くなってから行います。耐寒性は強いですが、植え付け直後に寒い環境が長く続くと球根が傷むことがあります。鉢植えでも露地植えでも球根に5cm程度土がかぶる深さに植え付けます。水はけのよい環境を好みますので、鉢栽培の場合、赤玉土7に腐葉土2、砂1程度の配合にします。市販の園芸用土に赤玉土を多めに混ぜてもよいでしょう。


露地植えの場合、大雨でも水がたまらないような場所に植えます。植え付け前によく土を耕し、緩効性肥料を土に混ぜておきます。明るめの木陰のような所が栽培適地です。鉢栽培でしたら春秋は日光によく当て、夏冬は軒下などで管理します。梅雨時の長雨などは嫌いますので、鉢栽培の方が管理しやすいでしょう。

春から初夏にかけて開花します。開花後に葉が大きく展開するので、5月〜6月上旬にかけて追肥をします。置き肥を少量置くか、薄めの液肥を2〜3回与えます。開花の前後が追肥のチャンスで、それ以外の時期は控えます。
露地栽培では、よほど乾燥しない限り特に水やりは必要ありません。鉢栽培では、植え付け〜7月上旬、9月中旬〜11月中旬ごろまでこまめに与えます。真夏の高温期は控えめにしてやや乾かしぎみにします。冬から早春までは休眠していますので水やりの必要はありません。

品種差がありますが、分球が進み株が込んでくると生育が悪くなってきます。2〜3年植えたままにしたら掘り上げて植え直します。掘り上げは株が枯れ込んでいる休眠期に行います。休眠の始まる11月ごろが最適期です。掘り上げた球根は乾燥させた状態で冬越しして春に植え付けます。保管場所は雨がかかったり湿気の多い場所は避けてください。
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マラケシュ | スワンレイク | バレンチノ | ||
黄色をベースにオレンジとピンクが混ざった花色が魅力の中型種。まとまりのよい草姿で鉢栽培向き。開花期:5月下旬〜7月。 |
草丈が高く丈夫な白花種。露地栽培向き。球根が大きく育ち、植え付け2年目はたくさんの花茎が上がる。開花期:5月中旬〜7月。上の写真は植え付けから2年目の開花。 |
丈夫で花数の多い品種。露地栽培も可能。植え付け初年より2年目の方が草丈が伸び、花数も多くなる。開花期:5月中旬〜7月。上の写真は植え付けから2年目の開花。 |

キルタンサスは特に手間をかけなくても毎年きれいに花を咲かせてくれる球根です。また、開花時に、すっきりとした甘い香りがするのも魅力です。細長い筒状の愛らしい花を咲かすマッケニーという原種は、花がよく咲き長もちするため、切り花としてたくさん栽培されてきました。花色を選別するだけでなく花の大きいものや、花期の違うものなど、マッケニーからの交配による育種もされており、それぞれに個性があります。マッケニーの交配種は花形や草丈がほとんど変わらないため、よく花色ミックスで販売されますが、花色によって開花期や育ち方に違いがあります。そこで、今回は花色別で特徴をご紹介します。 |
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基本的に鉢栽培とします。ポット鉢に球根を植え付けた状態のものを入手すると管理しやすくおすすめです。水はけのよい環境を好むので、陶器鉢などに植え替えする場合は、鹿沼土を混ぜた排水性のよい土を使います。浅めの素焼き鉢に根鉢を崩さないように気をつけながら植え替えます。


日当たりのよい所で栽培します。春秋はよく日光に当てるようにし、夏は直射を避けるため、冬は強い寒気を避けるために軒下などで管理します。

4〜6月ごろと10〜11月ごろによく育つので、そのころに少量の追肥をします。真夏と真冬は半休眠しますので、水やりを控えめにし、あまり面倒を見すぎないようにします。葉に元気がなくても、乾燥ぎみに管理します。

鉢増しはほとんど必要ありません。「キングイエロー」など球根がよく太り、根詰まりしてしまっているようなら、3月ごろに植え替えます。植え替えする際には盆栽の植え替えのように、根鉢を残したまま大きな鉢に植え替えるか、株分け(大きめ)します。根を完全に乾かしてしまうと新しく発根するまで時間がかかることがあります。鉢の大きさや環境によりますが、5年程度は植え替えなしでも問題なく開花します。10年以上同じ鉢のままで、毎年咲き続けることも珍しくありません。
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キングイエロー | パルビフローラ | マッケニーホワイト | ||
マッケニーの交配種で、マッケニーにはない濃い黄花の品種。球根がよく太り、葉も大きめ。花はよく香り、開花期が長く丈夫な性質。開花期:2月中旬〜4月中旬、12月下旬〜翌年1月中旬。 |
マッケニーより小さめの濃い花色の品種。香りはないがよく株立ちし、たくさんの花茎が上がる。春から初夏にかけてよく開花する。開花期:3月下旬〜6月中旬。 |
よく香る純白の品種。細めで華奢な草姿は、繊細な印象を受ける。球根も小さめで乾燥に弱いため植え替えを嫌うが、同じ鉢植えのままでも毎年開花する。開花期:2月下旬〜4月下旬、12月下旬〜翌年1月下旬。 |

千葉県長生郡の球根栽培の老舗「正和園芸」に勤務し、球根栽培を学んだ後、正和園芸を引き継ぐ形で「白子園芸」を立ち上げ、代表に就任。球根の中でも個性的な花が多い春植え球根のスペシャリスト。
