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夏植え秋咲き球根の魅力

秋の花壇を可憐に彩る 夏植え秋咲き球根の魅力

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まとめて植えると圧巻のボリュームに! リコリス

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リコリスはヒガンバナ科の代表的な植物です。東南アジア、南アジアに広く自生していますが、分布の中心は日本、中国になります。なかでもヒガンバナ、キツネノカミソリ、ナツズイセンは日本で生育するリコリス属の代表的な種です。
葉が出てくる前に花が咲き、秋の花後すぐに出葉するタイプと翌春に出葉するタイプがあります。夏が高温多湿の日本の気候では、春から秋にかけては庭に植えた植物を覆いつくすように雑草がはびこりますが、リコリスの生育期は秋から春までなので雑草に負けずに育ちます。
赤、白、黄、オレンジなど、さまざまな色があります。まとめて植えると華やかでボリュームが出て、秋の庭を多彩に彩ってくれます。

表情豊かなオレンジ色が人気の「キツネノカミソリ」。

栽培のポイント

花つきをよくするためには日当たりのよい場所に植える必要がありますが、木陰の少し暗いような場所でも生育可能です。水はけのよい場所を好むので斜面や盛り土をした場所、土質そのものが腐葉土を多く含むなど、排水のよい場所に植え付けます。
植え付け適期は休眠期である6~8月で、庭植え、鉢植えともに球根の首が隠れるくらいに植え付けます。鉢植えでは5~6号鉢に3球ほどが目安です。水やりは植え付け時にたっぷり与えた後、庭植えでは特に必要ありません。鉢植えでは土が乾いたら行います。
鉢植えでも育てられますが、地面に植えたリコリスの花が一斉に開花する様は圧巻です。非常に強い植物で、生育がよければ球根が増えすぎるので、2~3年に1度くらいは掘り上げて植え直してやる必要があります。肥料は元肥として用土に混ぜ込むか、開花後、葉が展開するまでにまきます。
光合成を行い、球根を充実させるため葉は自然に枯れるまで置いておきます。

※性質上、植えた年に咲かない場合があります。

大輪で濃いピンクの弁先に紫が入る「ジャクソニアナ」。
鮮やかな黄色が花壇のポイントになる「ショウキズイセン」。
お彼岸のころに咲くヒガンバナとして知られるラジアータ。

キラキラと光り輝く花弁がエレガント ネリネ

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南アフリカにおよそ30種が分布する植物です。通常秋から翌年の初夏まで葉を伸ばして生育し、夏から秋にかけて休眠しますが、夏にも生育する常緑種もあります。
現在流通する園芸品種の多くはネリネ・サルニエンシスを交配親としている品種群です。キラキラと光り輝く花弁をもつことから「ダイヤモンドリリー」とも呼ばれます。17世紀半ばからイギリスで品種改良が始まり、日本でも昭和初期に育種されていましたが、太平洋戦争の混乱期に多くが失われてしまいました。
ネリネは花もちがよいので、切り花として楽しむのもおすすめです。2~3輪開花した状態で茎の根元から切ると、2週間ほど観賞できます。

華やかなグラデーションが目を引く、白からピンク、赤色品種の混植。

栽培のポイント

8月下旬~9月に、軽石などを含んだ排水のよい用土に植え付けます。原産地は温暖な乾燥地帯で多湿を嫌い、また寒さにも弱いので、冬季に霜の当たらない場所に移動できるように鉢植えで管理します。
3~5号鉢に1~3球植え付けるのが目安です。鉢が大きすぎると過湿になりやすいので気をつけましょう。球根の上部が少し土の上に出るくらいに植え付けます。
肥料は緩効性肥料を用土の中に混ぜ込みます。秋から初夏までは用土が乾いたら水やりしますが、初夏に葉先が枯れてきたら休眠期の始まりなので、水やりをやめて日陰に置きます。

※性質上、植えた年に咲かない場合があります。

「ダイヤモンドリリー」と呼ばれる、人気のサルニエンシス系の品種。日光を浴びると花弁が輝きを放つ。

淡紫の花が美しく、丈夫な性質 サフラン

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サフランライスで知られるように食品や衣類を黄色に染めるためや、薬用、香料、薬味など、さまざまな目的で使われていた重要な資源植物の一つでしたが、花も美しいため観賞用として栽培されるようになりました。雌しべの一部である花柱が赤く印象的で、この部分から成分を取り出します。以前は利用部のみをサフランと称していましたが、その後、花そのものがサフランと呼ばれるようになりました。花の甘い香りも楽しめます。早春の花としての印象が強いクロッカスの仲間ですが、本種は秋咲きです。

栽培のポイント

日当たりがよく排水のよい場所に植えるのが重要です。植え付けは8~9月に行います。深さは5cm程度、鉢植えでは6号鉢に4~5球が目安です。植えっぱなしでも大丈夫ですが、3年ほど経つと球根が込みあうようになりますので、掘り上げて植え替えます。
花後にはリン酸分の多い肥料をやり球根を太らせます。チッソ分を多く含む肥料を与えすぎると球根が腐ってしまう場合があるので気をつけましょう。

淡紫色の花弁とオレンジ色の雌しべのコントラストが鮮やかで魅力的。

花色も葉も個性豊かに揃う オキザリス

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ムラサキカタバミなどが雑草としてもよく知られるオキザリスですが、一方で四つ葉のクローバーとして販売されていたりするなど意外に身近な植物です。
光が弱いと花は閉じてしまい、強い光の下で開くので、朝のうちは花が咲いていなくてもお昼過ぎに見たら咲いていた、というようなことがあります。品種が多く春咲き種、四季咲き種など開花期は幅広いですが、秋に咲く種類もあります。

栽培のポイント

日当たりのよい場所を好みます。強い光に当てないと、せっかく蕾がついても花が咲かないのでなるべく明るい場所で管理しましょう。
植え付けは8~9月に行います。乾燥に強く過湿に弱いので水はけのよい用土に植えましょう。秋咲き種は寒さにはそれほど強くないものが多いので、置き場所を移動できるように鉢植えにする方が無難です。
寒くなってきたら明るい軒下に置きます。鉢植えの場合は3年に1回のペースで植え替えを行います。寒さに強い種類は植えっぱなしでも大丈夫です。

葉はクローバー形で白い花を長期間咲かせる「バリアビリス ホワイト」。

繊細な花姿と色が愛らしい原種 シクラメン・ヘデリフォリウム

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シクラメンの原種の一つで、比較的寒さに強く丈夫な種です。秋にまず開花してから葉が伸び出します。キヅタ(ヘデラ)のように三角形で切れ込みの入った葉が特徴で、種名のヘデリフォリウムもこれに由来します。12月ごろに園芸店で売られている大きな花のシクラメンは「シクラメン・ペルシクム」という別種になります。

栽培のポイント

軽石などを多く含む水はけのよい用土に植え付けます。植え付け適期は5~9月の間で、鉢植えでもよいですが、場所を選べば地植えも可能です。
一般的な鉢物のシクラメンは球根の上部を地面より上に出して植えますが、原種シクラメンを育てる場合、特に庭植えする場合は、球根が完全に地面に隠れるように植える方が気温や湿度の変化を受けにくく、厳冬期や真夏の気候に耐えることができます。
日当たりがよく、水はけのよい斜面や土手に植えると、梅雨時の長雨にあたっても腐ってしまうことなく生育します。

冬に出回るシクラメンより小振りで、ピンクから淡紫色や白い花をつける。

置きっぱなしでかわいい花が咲く コルチカム

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ヨーロッパ、北アフリカ、アジアなどに45種が分布します。秋になると葉が出ないまま大きな美しい花を咲かせることから「裸の貴婦人(Naked ladies)」と呼ばれることがあります。コルチカムの名前は黒海東端地域の古代名である「コルキス」に由来します。
園芸植物として世界中で栽培されており園芸品種も数多く作られています。

栽培のポイント

球根がむき出しのまま放置されていても開花するくらい乾燥には強い植物です。花が咲くまで植えずに置いておき、花後植え付けてもかまいません。逆に過湿には弱いので、8~9月に日当たりがよく水はけのよい場所に植え付けます。鉢植えの場合、軽石、腐葉土などを含む水はけのよい用土に植えます。葉が伸び出したら日光の当たる明るい場所に置きましょう。花後、葉がかなり茂るので植え付けの間隔は広めにとります。
植え付けてから3年ほど経つと、生育がよければ自然に分球して球根が込みあうようになります。6月ごろには休眠するので、そのころに掘り上げて植え替えることもできます。

コルチカムでは珍しい黄花の「ルテウム」。 八重咲きの「ウォーターリリー」。室内に飾っても楽しめる。

小さなベル形の花をつける 秋咲きスノーフレーク

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ヨーロッパ南西部の地中海沿岸に分布する球根植物で、春に咲くスノーフレークとは別種になります。
白から淡ピンク色の2cmほどの小さなベル形の花が咲いた後、糸状の細い葉をつけます。スズランのような花を咲かせる春咲き種に対して、本種はより華奢ではかない印象で、山野草として扱われることもあります。

栽培のポイント

7~8月に砂主体の土に植え付けます。庭植え、鉢植えともに深さ5~10cmが目安です。
明るい木陰が植え付け適地です。長雨や夏の高温多湿、真冬の厳しい寒さを避けるように管理します。水はけのよい用土に地植えすれば、どんどん分球していきます。2~3年はそのままで栽培できますが、込みあってきたら植え替えます。
花は小さく、それほど目立たないのでなるべく詰めて植えた方が開花した時に美しく見えます。秋に開花した後、5月ごろに葉先が枯れてくると休眠します。

細く伸びた茎に華奢な花が咲く。釣鐘状の花は小さくても存在感がある。

涼しげで趣のある白花 秋咲きスノードロップ

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ヨーロッパを中心に分布しています。秋に生育を始め、2~3月に咲くものが一般的ですが、11~12月に開花する秋咲き品種もあります。花の少ない時期に咲くため貴重な存在といえます。
下向きに白くかわいい花が咲くことからスノーフレークと混同されることがありますが、別種の植物です。

栽培のポイント

9~10月に球根を植え付けます。鉢植えの場合、少し詰めぎみに植え付けると、開花した時寂しくなりません。用土は砂主体にします。
庭植えの場合、場所は選びませんが比較的日光の当たる場所がよいでしょう。特に春から秋にかけてほかの植物を育てにくい落葉樹の下は、秋から生育する本種にとってはぴったりです。庭植えは特に植え替えの必要はありませんが、鉢植えの場合は3年程度で鉢いっぱいに分球するので植え替えましょう。

下向きに咲く純白の花がかわいらしい。数株を詰めぎみに植えると映える。

平塚 健一(ひらつか けんいち)

1968年、兵庫県生まれ。京都府立植物園技術課企画係に勤務。熱帯植物、樹木類の担当を経て現在宿根草、球根類、水生植物や新設された絶滅危惧植物園、中国植物園の管理を行っている。

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