ブトウ特集

  • 人気の果樹苗!おすすめブドウ
  • ブドウ栽培 かんたんマニュアル

地植えは無論のこと、すべての果樹を鉢で育て、しかも食べておいしい果実を得る喜びを多くの
人たちに伝えたい。食べたいものを育てる、というところから始めることが、家庭園芸では大切です。
大森 直樹:1957年生まれ。岡山大学自然科学研究課修士課程終了。岡山県赤磐市(旧山陽町)にて果樹種苗会社を営む傍ら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。写真:カーポートの屋根を利用したブドウ棚。

ブドウ栽培 かんたんマニュアル

近年、夏の日よけにするためのゴーヤ栽培がブームとなっていますが、そのほかにブドウやキウイフルーツなどのつる性果樹が利用できます。しかし、実際に棚を設置して栽培しようとしても、どのように枝を伸ばしたらよいか、どのように管理を行えばよいか、わからないことがいっぱいだと思います。そこで今回は、そんなつる性果樹の中からブドウを取り上げ、鉢植え・露地植えそれぞれの基本的な植え付けから結実までのマニュアルをご紹介します。慣れてきたら、夏の緑のカーテンにするのもよいですね。


ブドウ栽培を成功させる4つのカギ!

放任で、野趣に富んだ楽しみ方もよいですが、最初の2年間の管理さえ間違わなければ、翌年以降の管理は信じられないくらいに楽になります。2年間は何とか我慢して基本に忠実な栽培を試みてください。

1)雨よけが必須

ブドウはつる性の永年果樹です。原産は雨の少ない中央アジア地帯で、日本の気候と比較すると、年間の降水量が3分の1程度と少なく、また日光が強いのが特徴です。そんな生い立ちをもつブドウは、雨や湿度が大嫌いです。農家がブドウ栽培を行う場合はほぼ100%、簡単な雨よけやビニールハウス、ガラスハウスを利用します。家庭園芸の場合、大掛かりなものは無理でも、軒下やカーポートを利用する、鉢植えで雨に当たらないように移動させる、などの工夫をすれば栽培は十分できます。

2)結実位置を知る

今年伸びた枝の3、4節目に花穂がつく。枝のどこに結実するかが分かれば、どんな仕立て方でも栽培可能です。
ブドウはその年に延びた新梢の3節目、4節目に花穂がつき、5月下旬から6月上旬に開花結実します。
つるは、そこから先の7節目につき、1節おいて節続きでつるがついていき、それが新梢の伸長に従って連続していきます。
ただし、花穂は細くて充実していない枝にはつかず、鉛筆ほどの太さのもの以上でなければつきません。

3)花穂・花房を整理

花穂、花房の整理でプロに負けない味の果実ができます。
ブドウの花穂は1000〜2000個の花が集合したものです。花を咲かせるためにはかなりのエネルギーを必要とするため、ついた花をすべて結実させることは無理ですが、早めに不要な部分を整理していくことで、余分なエネルギーの消費を抑えることができます。つるも花同様にエネルギーを使うため、早めに切除します。
家庭園芸では販売されているブドウのような整った逆三角形の形にとらわれず、おいしい果実を収穫することを目的にしてもらいたいので、糖度が高い花穂の肩部分の一部を残した整理の仕方をおすすめします。

図:花穂・花房を整理

4)多肥は禁物

肥料の過多は軟弱徒長を招くため、肥料より土づくりを優先します。
原産地は雨も少なく、土壌には肥料分もほとんどありません。雨が多いうえ、肥料も多く施されるとなれば、枝ばかりが伸びて結実しにくいだけでなく、結実しても裂果となったり病気に弱くなったりします。
かといって、露地栽培では雨を吸わせないようにすることは不可能なので、逆に枝をしっかり伸ばして樹を落ち着かせることで結実を安定させます。

鉢植えでのブドウ栽培の方法

植え付け
図:植え付け
1)1年目の摘芯と間引き 2)支柱立て
  1. 植え付け時に残した3芽以外にも芽が伸びてくるが、勢いのよい枝を3本のみ残す。
  2. 各枝に5枚の葉が展開したら、3本の中から勢いのよいもの2本を選び、1本は枝元から切る。残した2本の枝は、葉が3枚の所から先を切る(摘芯)。
高さ1.5mの支柱を4 本立てる。
2本の枝から脇芽が発生する(副梢)。
副梢のうち枝元から勢いのよいものを1本ずつ残し、
それ以外の枝は1芽残して摘芯する。
残した枝4本をそれぞれ支柱に誘引する。
3)冬の剪定 4)翌春の手入れ
落葉後、4本の支柱に誘引した枝のうち、根元に近い方から出た枝を2本残し、他の枝は摘芯し、残した枝はそれぞれ3芽で剪定する。
冬の剪定で残した2本から伸びてきた新梢のうち、勢いがよく、花房のついた枝を4本選び、支柱に誘引する。それ以外の枝は1芽残して摘芯する。

5)2年目以降の管理

  1. 収穫後、葉色が淡い時は油かすを50gほど施す。葉が落ちるまでは乾かさないように水やりをする。
  2. 落葉後は、根元に近い方から出ている枝2本を残し、それ以外は枝元で切除。残した枝は3芽ずつ残して剪定し、以降、春からの管理は1年目に準じる。その後の管理はこの繰り返しとなる。

露地植えでのブドウ栽培の方法

植え付け
図1:植え付け
ブドウ棚の基本
図2:ブドウ棚の基本

1)1年目の生育と管理方法

  1. 春に伸びた枝のうち、勢いのよい1本を支柱に沿わせて伸ばす(他の枝は切除)。主幹が棚上10cmになれば誘引線の5cm下で摘芯する。
  2. 上2節から出た枝2本を主枝とし、50cmほど伸ばしたら誘引線に沿って横に誘引する。
  3. それより下に出た枝は2〜3葉で摘芯。

8月下旬の作業 1年目の冬の剪定
主枝から伸びた新しい枝は50cmほどになればすべて平行に誘引する。

2)2年目の育て方

  1. 主枝の根元から先端まで一斉に葉が出るのが理想的。
  2. 新しく伸びた枝が花房をもてば、5月ごろに支線に向けて平行に誘引する。この時点で枝が50cm以下であれば、実がついていても花房を落とす。
  3. 平行に誘引した枝は1〜1.2mで摘芯する。

2年目の冬の剪定

  1. 1年目同様、鉛筆ほどの太さの所で主枝は切除し、主枝から伸びた枝は1芽を残して根元からカット。
  2. 主枝の長さが左右各7mを越えたら、それ以上伸ばさずに摘芯する。

ブドウの主な病害虫

害虫 ブドウトラカミキリ、ブドウスカシバ、コガネムシ、スリップス
病気 黒とう病、うどんこ病、灰色かび病、褐斑病、さび病、晩腐(おそぐされ)病、べと病
  • 灰色かび病
  • 褐斑病
  • さび病
  • 晩腐病
  • べと病

落ち葉の処分や剪定した枝などの処分をこまめにし、害虫も見つけ次第、捕殺や効果的な薬剤散布などを適切に行い、対策をとりましょう。果実に袋かけすることも防除に有効です。

TOPへ

2010/08/01