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栗(クリ)の栽培方法・育て方

栗(クリ)の栽培方法・育て方栗(クリ)の栽培方法・育て方

ホクホクと甘いクリは、秋の味覚の代表です。日当たりのよい場所を選び、水はけのよい腐植質に富んだ土壌に植え付ければ、長年にわたって毎年豊かな実りをもたらしてくれます。

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クリが好む栽培条件と生育過程を把握しようクリが好む栽培条件と生育過程を把握しよう

世界で栽培されているクリには、日本グリ、中国グリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリがあります。日本で栽培されているのは、ほとんどが日本グリですが、中国グリに似た性質の品種も栽培されています。焼き栗の「天津甘栗」は、中国から輸入された中国グリです。
クリは永年生木本作物です。100〜200年あるいは数百年を経たクリの大木は、京都の丹波地方をはじめとする古い産地で見られます。それらの地域は、クリにとって環境条件が好適な場所、いわゆる適地適作の栽培環境といえるでしょう。
クリの栽培適地の気候条件は、年間の平均気温が10〜15℃、4〜10月の生育期間中の平均気温は16〜21℃、冬季の最低気温がマイナス15℃以下にならない所です。降水量は、年平均が1400〜2000o、生育期間中で1000〜1400oです。土壌条件も、極端な砂土や粘土質を除けば、たいていの土壌で栽培できます。しかし、土壌改良が可能ならば、水はけがよく、土層の深いれき質壤土を好みます。

クリの一生と生育の特徴

クリの寿命は長いもので100年以上のものもありますが、平均的には50年前後といわれます。木の寿命は、植え付けから開花開始までの幼木期、開花から成木までの若木期、そして成木期、老木期と四つに分類できます。

クリの実が熟してくると、イガが裂果する。

クリの実が熟してくると、イガが裂果する。

●幼木期

植栽後2〜3年の樹齢を幼木期といいます。一般に、この時期は枝や根の生長が盛んで、著しく伸長生長します。枝は上方へ強く伸びる傾向があり、新梢は1年に1m以上も伸長することも珍しくありません。栄養生長が盛んで、栽培上では将来の木の骨格をつくる重要な時期なので、整枝・剪定時には枝の配置に十分注意します。

●若木期

幼木期についで、4年生から8年生くらいの樹齢を若木期といいます。果樹はある樹齢に達すると花芽を形成して結実します。この樹齢を結果年齢といいます。クリはほかの果樹よりも結果年齢に達するのが早く、苗木でも花が咲き、実をつけることがあるくらいです。枝の伸長生長は幼木期よりも鈍り、ここから結実量が樹齢を重ねるごとに増加します。木の姿は結実に伴って枝が直立から下垂しやすくなり、だんだん外に開いていきます。この時期は生殖生長がだんだんと盛んになりますが、まだ栄養生長がそれを上回っています。

クリは一本の木に雄花と雌花が両方咲く。写真は長さ15〜20pの雄花。

クリは一本の木に雄花と雌花が両方咲く。写真は長さ15〜20pの雄花。

●成木期

9〜10年生以後から20年生前後の樹齢の時期を成木期といい、盛果期ともいいます。樹齢を重ねるごとに結果量が多くなり、樹冠が拡大して隣の木と交差するようになってくると毎年の収量もほぼ一定になります。好適な環境下では50年生となっても成木期の状態が維持されている場合もありますが、環境が損なわれる所では、この時期が短くなります。木の姿は果実の重みで枝が下垂してくるために半円形となりますが、密植園では隣接樹と交差し、クリ園内に日光が入らず下草も生えない状態になりがちです。こうなると、日光不足により樹冠内部の枝が枯死して、結果部の樹冠表面が平面化してきます。また、この状態が続くと樹勢が衰えて収量が急激に減少し、いろいろな病害虫も増えて成木期間を短くし、ついには老木期に入ってしまいます。 

●老木期

一般に20年生以後の樹齢の時期を老木期といいます。しかし、前述の通り、環境条件のよいクリ園では数十年生のクリが成木期に相当する樹勢を維持しているケースもあります。この時期は年ごとに樹勢が衰えて収量もどんどん減ってきます。枝はあまり伸長しない代わりに、花芽の着生が多くなります。しかし、充実した結果母枝や結果枝が発生しにくいので、雌花が現れても生理落果が増し、隔年結果も激しくなって実りが安定しなくなります。残念ながら木としての寿命といわねばなりません。

品種によって樹齢の長短がある

クリには早生種から晩生種まで多数の品種があり、それぞれに生育特性が異なります。クリの品種のうち、多収性品種といわれる「筑波」は他品種に比べて樹冠の拡大が早く、木の姿は円筒形になります。果実の生産量も品種によって違いがありますが、いずれも樹冠が拡大する成木期までは増加し、老木期になると年ごとに減少する傾向にあります。 
一般に早生品種は若木期から成木期に達するのが早く、樹勢の衰えも早くて経済樹齢が短いといえます。これに対して中晩生種は、成木期に達するのが早生種に比べてやや遅いものの、樹勢が強くて成木期間が長い傾向があります。
このようにクリの寿命の長短は栽培地の環境条件、特に土壌条件や栽培管理、品種などによって影響を受けるといえます。
また、クリは自家不和合性が強い果樹なので、1本ではなかなか結実しません。3品種以上を混植し、結実の安定を図ることが大変重要です。早生、中生、晩生と、収穫時期が長くなるように組みあわせるとよいでしょう。

クリは自家不和合性が強い

クリは1本ではなかなか結実しないため、3品種以上を混植し、結実の安定を図る。早生、中生、晩生と、収穫時期が長くなるような組みあわせがよい。

クリの性質にあわせて適切に管理・栽培しようクリの性質にあわせて適切に管理・栽培しよう

年間の木の生長

クリの生育は年によって多少の変化はあるものの、毎年ほぼ同じような生育過程を繰り返します。新梢(結果母枝の頂芽)は発芽後から7月中旬ごろまで伸長しますが、結果母枝の中央部以下の芽からの新梢は生長が悪く、その伸長は5月下旬にはほとんど停止します。根は、4月中下旬と8月下旬〜9月中旬の2回、旺盛な伸長期があります。この時期、木の体内ではチッソとともにカルシウムの含量が多くなります。

体内養分の周期にあわせた肥料の与え方

クリは生育につれて吸収養分が異なってきます。チッソの吸収は3月上旬から始まり、発芽、新梢の伸長、開花、果実の肥大へと生育が進むにつれて量の増加が見られます。新梢の伸長が停止する7月下旬から果実の肥大成熟期にかけてチッソの吸収量は急増しますが、その後は急激に減少します。リン酸の吸収は生育期間を通して非常に少ないのですが、その増減も変化があまりありません。カリの吸収は開花後の7月上旬ごろから急激に増し、果実の肥大成熟期までチッソと同様に増加します。このことは実肥にカリが重要視される一つの理由です。
これらを考えたうえで、根の活動が始まる3月上旬にあわせ、元肥は12月中旬に施します。元肥や追肥の量は、品種や収量、樹勢や土壌条件により異なるものの、一般的には1年生でチッソ20g、カリ20g、2〜3年生でチッソ50g、リン酸25g、カリ50g、4年生以降はチッソ100g、リン酸50g、カリ100gです。それぞれの割合は、チッソは元肥で60%、夏肥(6月下旬〜7月上旬)で20%、秋肥(収穫後すぐに行うが、晩生種では収穫の1週間程度手前の地温があるうちに行う)で20%とします。リン酸は元肥で100%与えます。カリは元肥で50%、夏肥で30%、秋肥で20%とします。また、2年目以降は、毎年休眠期に、完熟堆肥を20s程度施してすき込みます。

体内養分の周期にあわせた肥料の与え方

適期に植え付ける

植え付けに適した時期は、休眠落葉後の11〜12月です。春植えもできますが、3〜4月に植えたものは、根の発達や養分の吸収が遅れ、春先の新梢の発生が悪くなるので、できるだけ秋植えをおすすめします。どうしてもという場合は3月に入って雨が降るのを待って、植え付けましょう。

植栽間隔を十分とる

クリは太陽光線の当たらない部分は結実しなくなるどころか、下枝が枯れ込んできます。そうなると、急激に樹勢も落ちてくるので、5.5m四方に1本の間隔で植え付けます。ただし、痩せ地の場合など、地力の低い所では4.4m四方にして、植栽間隔を調整します。

植え付け

植え穴は大きいほどよく、多量の有機物を入れれば、より生育がよくなるため、深さ50〜90p、直径80〜100pが理想です。水はけの悪い所では、畝を作り植え付けます。植え付け後、株元から40〜50pの所で切ります。

植え付け

11〜12月が適期。深さ50〜90p、直径80〜100pの植え穴を掘り、元肥を施して植え付ける。株元から40〜50p残して上部を切りとる。

植え付け後の管理

植え付け後3〜4週間で活着し、穂木の芽が動き始めます。同時に台芽も動き出すので、早めにかきとります。穂木の芽がある程度伸びたら、その中の強い芽を15〜20p間隔で4〜5本残します。また、幼木のうちはよく観察して、アブラムシ、クスサンなどの虫が発生したら早めに防除します。

植え付け後の管理

穂木の芽がある程度動いたら、その中の強い芽を15〜20p間隔で4〜5本残す。

目指すクリの樹形

クリは、変則主幹形が最も望ましい樹形です。幼木期は、整枝を中心に行い、主枝本数を3〜5本と決めて頑丈な骨組みをつくります。日当たりの悪い枝が出ないように、大きな枝や結果母枝を間引くことを忘れずに行います。10年以上の成木では樹高が約8mまで達する高木になり、管理しづらくなるので、6年目に主枝が地面から約4mになるように、主幹を切り戻します。こうすると樹冠内部にも日光がよく当たるようになるので、おいしいクリを収穫し続けることができます。この作業を、芯抜き(心抜き)といいます。

変則主幹形の整枝・剪定

植え付け後に残した主枝4〜5本の中で、最も生育のよい新梢を主幹としてまっすぐ伸ばし、それより下の枝は主幹より弱く分岐角度の広い枝は残し、それ以外の枝は切り落とします。主幹と残した枝の先端は軽く切り返します。次の年には枝がかなり込みあって発生してくるので、主幹、主枝、側枝の区別をはっきりつけるようにします。そのためには、主幹延長枝をまっすぐに伸ばし、芽かきと摘芯を行いながら、第2段目の主枝候補になる枝を適当な間隔(30p以上離す)で発生させます。この場合も、主幹より弱い分岐角度の広い枝を利用し、枝の発生する方向に注意して、第1段目の主枝候補枝と直角の方向に発生したもの2〜3本を残し、ほかは切除します。側枝同士で重なる枝、交叉枝、並行枝、ふところ枝などは基部から切除し、各主枝の側枝は軽く切り返します。
4年目以降も、主幹延長枝と主枝候補の枝の先端を軽く切り返します。

収穫と貯蔵

クリの実は、イガの中に1〜3個入ります。裂果して落ちたものを拾って収穫します。クリは貯蔵性に富んでいるので、取り扱いは簡単ですが、保存する場合は必ず通気性のよい容器を使いましょう。また、貯蔵前の果実を濡らさず、果実の温度が上がらないように注意します。家庭用冷蔵庫で貯蔵する場合は、ポリエチレンの袋に入れて密封して貯蔵します。4℃前後の温度で管理できれば、翌年2月ごろまで貯蔵が可能です。

変則主幹形の仕立て方
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大森 直樹(おおもり なおき)

大森 直樹 (おおもり なおき)

1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。

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