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イチゴの栽培方法・育て方!土作りのポイントも紹介

甘くてジューシー、だれもが愛するおいしいイチゴを作ろう!

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完熟の真っ赤なイチゴを口に入れた時の甘酸っぱくてジューシーなおいしさは、幸せを感じる一瞬です。子供だけではなく大人にも大人気のイチゴを、ぜひ自分で育ててみませんか。品種の選び方から栽培方法まで、おいしいイチゴを作る秘訣をたっぷり紹介します。

イチゴは江戸時代の末期にオランダから伝わった

真っ赤に熟したイチゴの香りと甘さは、子供にも大人にも好まれます。またイチゴはおいしいだけでなく栄養も豊富です。特にビタミンCの含有量は多く、成人の1日分の必要摂取量50mgを中粒イチゴなら4〜5個で摂取できます。
ところで、イチゴは18世紀に北米原産の野生種とチリ原産の野生種をオランダで掛け合わせすることによって作られ、江戸時代末期にオランダ人によって日本にもたらされました。そこで、今でもオランダイチゴと呼ばれています。
当初、イチゴは真っ赤な色が食用としては受け入れられず、観賞用として栽培されていました。イチゴが食用として普及したのは明治になってフランスやアメリカ、イギリスからの栽培種が輸入され、日本でも品種改良がなされた後のことです。とはいえ、当時はまだ珍しい高級野菜でした。誰もが口にできるようになったのは昭和30年代に入ってからのことです。
現在人気のイチゴは、甘さだけでなく酸味がある大粒のイチゴです。イチゴの品種改良は交配してタネをまき、その中から優秀なものを選抜するという方法で行われています。イチゴの種子は実の表面についている粒々です。これをまいてうまく育てれば、翌年には実がつくまで大きく生長します。ただし、タネから育てたイチゴは形質が不揃いで、市販のイチゴのような品質のよいものは望めません。
ところで、日本の山地にもエゾヘビイチゴ、シロバナノヘビイチゴ、ノウゴウイチゴなど食用になるオランダイチゴ属の野生種が数種類あります。しかし、観賞用に栽培されているワイルドストロベリー(フラガリア ベスカ)のように実が小さく栽培はしていません。なお、同じバラ科の植物でイチゴという名前がついていても、キイチゴ(キイチゴ属)やヘビイチゴ(ヘビイチゴ属)はオランダイチゴ(オランダイチゴ属)とは別の仲間です。

イチゴの栽培は苗から始めるのがおすすめ!

イチゴには、春に1回花が咲いて実をつける一季なり性、春と秋に実をつける二季なり性、年中開花する四季なり性があります。このうち、秋から春に店先に並ぶイチゴは一季なり性品種で、品質がよいのでおすすめです。この一季なり性品種の苗を人為的に早く低温にあわせ花芽を分化させ、休眠することなく生育を続けさせるために電照や加温栽培をします。それが、クリスマスのころから春先にかけて店先に並ぶイチゴです。
本来、イチゴは秋に低温にあうと花芽ができ、さらに日長が短く気温が下がると苗が休眠・矮化(株が小さくなる)します。休眠中の苗は、たとえ生育適温になっても休眠を続けます。普通は11月中下旬に最も休眠が深くなり、一定の低温に一定期間あうと休眠が破れて(休眠打破)生育を始めます。ですから、露地では春にならないと収穫できません。
このような加温栽培や電照栽培は高度な技術を要します。そこで、家庭菜園では特別な操作のいらない露地栽培や戸外での鉢栽培が適しています。
苗は前年栽培したイチゴから出るランナー(匍匐枝)からとることができます。ランナーから出た1番目の苗は秋に定植するまでに大きくなりすぎるため、普通2〜3番目の苗を使用します。大苗は、植え傷みが大きく根付きが悪いためです。ランナーからの育苗には5カ月ほどかかります。その間、植え替えや病害虫の防除、水やり、除草、追肥などの管理が必要です。そこで、苗は通販や園芸店などで売られているものを購入するとよいでしょう。
イチゴの品種はたくさんあり、どれを作るか迷います。初めて栽培する場合には、病気に強く栽培しやすい品種を選びましょう。果実は少し小さめですが、‘宝交早生’など昔から栽培され続けている品種がおすすめです。

イチゴは野菜?果物?
店ではイチゴは果物として扱われていますが、園芸学上は野菜に分類されます。
中には例外もありますが、園芸学では実のなる植物で草本類(いわゆる草:年輪がない植物)を野菜として、木本類(いわゆる木:年輪がある植物)を果物として分類しています。
そこで、イチゴをはじめ、スイカ、メロンなどは草本ですから野菜に分類されます。

イチゴのライフサイクル(一季なり性)

イチゴの栽培ポイント

露地栽培の場合

日当たり、風通し、水はけのよい腐植に富んだ場所が適しています。ある程度は連作が可能ですが、年を追うごとに花つきが悪く実が小さくなって、葉ばかりが茂るようになってきます。畑が狭く輪作ができない場合には、イチゴの作付けを1〜2年間休みましょう。

1畑の準備

植え付けの2週間前までに、1m2当たり苦土石灰を約100gまき、よく耕しておく。植え付け1週間前までに完熟堆肥、化成肥料、熔成リン肥をまき、1条植えでは60〜70cm、2条植えでは100〜120cm幅の畝を立てる。

バイオダルマ
バイオダルマ
バイオコダルマ
バイオコダルマ

2植え付け

1条植えでは株間30cm、2条植えでは条間40cm、株間30〜35cmとする。千鳥植えでもよい。クラウンを埋めないように浅植えにし、植え付け後はたっぷり水やりをする。

Pointクラウンの傾きを揃える
花はランナー片のついている反対側につくので、手前に花がくるようにランナー片の向きを揃えて植え込むと作業しやすくなります。両端にランナー片がついている株の場合は、クラウンの傾きを揃えます。傾いている背側に花が咲きます。

3追肥

2月上旬になると芽が動き始める。ハコベやホトケノザなどの冬雑草をきれいに抜きとった後、1m2当たり化成肥料(チッソ、リン酸、カリの成分量8〜10%)約30〜50gを、株元から10cmほど離して追肥する。追肥後、土の表面を軽く耕しておく。

4防寒対策

寒さに強いので特に防寒の必要はないが、寒地では、寒冷紗や不織布などで防寒対策をするとよい。ビニールなどをかけると、生育が進み厳寒期に開花してしまう。厳寒期に開花しても実になる部分が凍害を受けて収穫できない。

5マルチング

2月上旬、除草と追肥、枯れ葉の整理をした後に黒いポリエチレンフィルムでマルチングをする。畝全体に株の上からマルチフィルムをかぶせ、苗の部分にカッターで切り込みを入れる。葉を傷めないように株をマルチ上に引き出す。

6水やり

イチゴは、秋の低温期に休眠状態に入り1月中下旬になると休眠から覚めるが、そのころは気温が低いので生育することはない。休眠中は低温や乾燥には強いが、極度に乾燥すると枯れるので、土の表面が白く乾いたら適宜水やりをする。

7受粉

開花初期は気温が低くミツバチなどの訪花昆虫が少ない。受粉がうまく行われないと奇形果ができやすくなる。奇形果の発生を防ぐには、先のやわらかい毛筆や化粧用の筆などで花びらの内側の実になる部分を万遍なくなで、人工受粉するとよい。

8収穫

開花後30〜40日で収穫できる。農家では流通に要する時間を考えて完熟する少し前に収穫するが、家庭菜園では真っ赤に完熟した実が収穫できるのがメリット。実の裏側も赤く色づいているかどうかを確かめてから収穫する。

病害虫防除
高温多湿時には、葉にうどんこ病が、実には灰色かび病が発生します。また、ダニ類やアブラムシも多く発生します。特に、アブラムシは吸汁の害だけでなくウイルス病を媒介します。これらの病害虫を防除するには、地面に近いところから出た古い葉を摘んで風通しをよくし、敷きわらなどをして雨滴による土の跳ね返りを防ぎます。また、ヨトウムシやナメクジは早朝に畑を見まわり、捕殺または薬剤により防除します。炭疽病、根腐病、萎黄病などは、薬剤による土壌消毒のほか、土が多湿にならないように排水をよくすること、連作を避けること、園芸通販などで求めた健全な苗を使用することなどで防ぎます。

鉢栽培の場合

1土の準備

用土は、保水性と通気性がよいものが適している。赤玉土6:腐葉土3:ピートモス1などを配合して培養土を自作する方法もあるが、市販の野菜用培養土なら病害虫の心配もなく安心。苗1株当たり2Lほどの用土を用意する。

2植え付け

鉢底ネットを敷き、排水をよくするために底に軽石などを敷く。培養土を縁から3〜4cmくらい下まで入れ、土を板きれなどでならし、株間20〜30cmに植え付ける。その後、底から水が出るまでたっぷり水やりする。株が多すぎると生育が悪く収量も減少するので注意。

3水やり

畑土では、水分が毛管現象の働きで地中から上昇してくるので、深くまで乾燥することはない。しかし、鉢栽培では土全体が乾いてしまうので、表面が乾いたら水やりをする。鉢底から水が出るまでたっぷりやることが大切。

4追肥

植え付け1カ月後と株が休眠から覚めて生育し始める2月ごろに、一般の化成肥料(成分量8〜10%)かイチゴ用の緩効性肥料を1株当たり1〜2g、株元から10cmほど離れた所にまく。冬の間は株が休眠しているので、追肥をする必要はない。

5防寒対策

厳寒期は北風の当たらない暖かい場所に移動して栽培するとよい。鉢を寒冷紗などで覆えば風よけや霜よけ効果がある。ただし、ビニールなどで覆うと生育が促進され、その後の凍結により花や新葉が被害を受ける恐れがある。

栽培Q&Aイチゴの花が咲かないのはなぜ?
露地のイチゴは9月中下旬に花芽ができます。そして、低温に一定期間あうと休眠が破れ春になると花が咲くのですが、日当たりや排水が悪い畑、温度が低い時などは生育が遅れるため花がなかなか咲きません。また、チッソ肥料過多で過繁茂した苗も花つきが悪くなります。
もう1つの原因として、市販の苗の中で、花芽ができたころに出るランナーからとった株をハウスに植え付け、子株を増やしたものを親株として販売している場合があります。この苗は低温にあっていないので、その年は花が咲きません。
覚えておこうイチゴをおいしく作るには
  • Point 1露地栽培やプランター栽培に適した品種を選ぶ。
  • Point 2園芸通販などで購入した充実した健全な苗を植える。
  • Point 3施肥量や栽培管理を適切に行い、スムーズな生育を心掛ける。
ベランダでも手軽にできるイチゴの袋栽培
培養土を入れた肥料の空き袋でもイチゴが作れます。袋に野菜用の培養土を入れ、底に5cm角ほどの穴を数個開けて排水孔にします。土がこぼれないように小さな穴をたくさん開けてもよいでしょう。
水やりは鉢栽培と同じように土の表面が白く乾いたら適宜行い、排水孔から水が流れ出るまでたっぷり与えます。そうすると、土中の古い空気が追い出され、新しい空気と入れ替わるので根の活性が高まります。ただし、過湿になると根腐れするのでやりすぎには注意してください。
袋栽培は移動が簡単で、ベランダや玄関先でも栽培ができます。

麻生 健洲

麻生 健洲(あそう けんしゅう)
千葉大学園芸学部卒業後、高校教師として園芸(主に野菜)や生物工学(バイオテクノロジー)の指導をする。退職後は、書籍の執筆や園芸講座の講師として活躍するかたわら、家庭菜園を楽しむ。生け花や水彩画、写真など多彩な趣味を持つ。著書に「だれでもできるベランダで野菜づくり」などがある。