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夏まき野菜 上作のポイント

夏まき野菜 上作のポイント

夏まき野菜栽培の四つの注意点

ハクサイ

ハクサイ栽培の楽しみ

ハクサイの原産地は中国。日本に本格的に導入されたのは明治初年といいますから、意外にも新しい野菜です。ハクサイは糖質が少なく食物繊維が多い、いわばダイエット野菜。しかもビタミン、ミネラルは豊富で、ビタミンはCとKが多く、ミネラルはカリウム、マグネシウムなどが含まれます。ビタミンCは風邪の予防など、またカリウムには利尿作用があり、塩分を排出する働きがあり、健康維持に役立ちます。

苗作り

ハクサイの根は直根が発達するので本来は直まきに向きますが、幼苗期には害虫の被害にあいやすいので苗作りをすると安心です。
小型ポリポットなどに3〜4粒まき、その後は、虫よけのため防虫ネットをトンネル状に覆って、虫の侵入を防ぎます(第1図)。発芽後、密生部を間引き、本葉2枚のころ1株にし、本葉5〜6枚の苗に仕上げます。

畑の準備

植え付け2週間前に、1m2当たり苦土石灰100gをまいて、土とよく混ぜておきます。畝間70〜80cmとして、深さ20cmの溝を掘り、この溝の長さ1m当たり化成肥料(チッソ:リン酸:カリ=8:8:8)100〜150gと堆肥2〜3kgをまき、土を戻してよく混ぜた後、畝を立てます(第2図)。

ここがポイント1

生理障害対策
ゴマ症は結球している葉をむくと、内側の軸の部分に、ゴマを散らしたような黒い斑点が見られます。チッソが多すぎることが主な原因ですが、畑の乾燥または過湿、老化苗などで根の張りがよくないことも原因と考えられています。
心腐れ症は、外葉を10枚くらいむくと内部の葉が褐変している症状で、カルシウム欠乏が原因です。カルシウムは土壌改良のためにあらかじめ施すので、畑にカルシウムが不足することはまず起こりませんが、土の乾燥・過湿や根傷みで一時的にカルシウムが吸収されないため、その時の欠乏が葉に現れるのです。
これらの対策としては、普段から十分に堆肥を施し、根をよく張らせ、生育後半まで肥効が続く土づくりをしておくことです。
直まき・植え付け

直まきでは、早生種は株間40〜50cm、中晩生種は50〜60cmとし、1カ所5〜6粒まき、不織布をベタがけしておきます。
発芽後に子葉が重なる所を除き、本葉3〜4枚の時に3〜4本、本葉7〜8枚で1本立ちにします。
苗の植え付けは、品種により40〜60cm間隔に掘り、畑が乾いていたら穴に水やりをしておきます。植え付けの深さは、子葉の下までの深さとし、植え付け後は株元の土を手でしっかり押さえます(第3図)。

追肥・土寄せ

追肥は最後の間引き後、化成肥料を1株当たり10g程度、畝の肩にまき、株元に土寄せします。2回目はその20日後に同量を通路にまき、土寄せします(第4図)。

病害虫の防除

ヨトウムシ、コナガ、アブラムシなどは、オルトラン水和剤などで駆除します。病気の予防には葉を傷めないことが大切ですが、軟腐病が発生したら発病株を早めに除去し、広がりを防ぎます。

収穫

結球の頭を押さえ、かたくしまったものから収穫します。片手で株を傾け、包丁を地際に入れて切り、持ち上げて切り口を再度切り直して、平らに整えます。

ここがポイント2
地際から腐る軟腐病対策
この病原菌は、雨の時に土とともにはね上がり、葉の傷口や下葉の軸の部分から侵入します。強風や作業で葉が傷んだ部分や、害虫の食痕から侵入することもあります。発病すると防除できないため、病気の株は早めに抜いて、畑から持ち出して処分します。この病気の予防法としては、(1)連作をしない、(2)高畝にして排水をよくしておく、(3)害虫の防除を行う、などの対策をとります。
ここがポイント3

根こぶ病対策
根こぶ病の初期症状は、晴天日に葉がしおれ、夕方には回復していますが、症状が重くなるとしおれてしまいます。根を抜いて大小のこぶがついているかどうかを確認してください。この病原菌は、土の中に長く生存して土壌伝染し、酸性土、排水の悪い畑で繁殖しやすいのが特徴です。
予防法は、(1)アブラナ科に共通の病気なので、対策として5〜6年間はアブラナ科作物を栽培していない畑を選ぶ、(2)抵抗性品種を使う、などです。
しかし、完全には防ぎきれないので、輪作をすることが大切です。
よくある失敗

冬の間、長くハクサイを楽しむつもりでしたが、寒さで傷んでしまいました。貯蔵方法を教えてください。
ハクサイは頭の方から寒さで傷むため、外葉で帽子のように包んでおきます。収穫期のハクサイを畑に残したまま、外葉をしばっておく方法で、結束貯蔵といいます。ただし、アブラムシなどがついていると、内部で繁殖してしまうことがあるので、しばる前に防除しておきましょう。特に暖かい地方では要注意です。
短期間の貯蔵には、収穫後、1株ずつ新聞紙に包んで屋内の冷暗所に置いておくことで1カ月は日もちします。
野菜ソムリエ ジロウのおすすめ品種

土質を選ばず、耐病性があり生理障害に強い品種を選びましょう。結球の形は、早生は小型で砲弾型でしまりはやや弱い傾向があります。晩生になるほど、葉が包み込むようによく巻いて、大型になります。


  • 晴黄60べと病や生理障害に強く、結球内部がクリーム色で見た目に美しく、肉質がやわらかい早生種。

  • お黄に入りタネまき後2カ月程度で重さ600g〜1kgで収穫する極早生種。小家族には、食べきりサイズなのでおすすめ。

  • きらぼし90根こぶ病や生理障害に強い中晩生品種。

  • オレンジクイン結球内部が橙黄色。サラダにも利用できる。

成松 次郎
神奈川県農業技術センターなどで野菜の研究と技術指導に従事後、(社)日本施設園芸協会で施設園芸および加工・業務用野菜の生産・流通振興に携わる。現在、園芸研究家、野菜ソムリエ。