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夏まき野菜 上作のポイント

夏まき野菜 上作のポイント

夏まき野菜栽培の四つの注意点

ニンジン

ニンジン栽培の楽しみ

ニンジンはセリ科の野菜で、原産地はヨーロッパからアフリカ北部、小アジア(トルコ)、日本へは中国から17世紀前半に渡来したといわれます。

ニンジン(英名キャロット)の名の由来となるほど、カロテンの含量は野菜の中でも随一で、葉も栄養満点です。また、豊富に含まれるカリウムは高血圧の予防、食物繊維は便秘解消に役立ちます。

畑の準備

タネまきの2週間前に1m2当たり苦土石灰100gを散布して、深さ30cm程度に耕しておきます。タネまきの1週間前に、化成肥料(チッソ:リン酸:カリ=8:8:8)100gと細かい完熟堆肥1kgを施し、土とよく混ぜておきます(第1図)。

タネまき

60cm幅の畝に、条間30cmのまき溝を2条つくります(第2図)。
畑が乾いている時は、溝に水やりをしておきます。溝にタネを1〜2cm間隔に条まきし、軽く覆土します。土の乾きを防ぐために、刻んだワラや刈り草をかぶせておきます。

間引き・追肥

1回目の間引きは本葉4〜5枚、2回目は6〜7枚の時に行い、最終の株間を10〜15cmにします(第3図)。
最後の間引き後に1m2当たり化成肥料50gを追肥し、土寄せします。さらに、収穫期近くには、根の肩の部分にさらに土寄せして、根が緑に着色するのを防ぎます(第4図)。

ここがポイント1

間引きのタイミング
ニンジンは幼苗の時は葉が互いに触れあう程度の密植状態がよく、これを「共育ち」といいます。こうして、夏の高温と乾燥、風雨や病害虫などの厳しい環境を耐えることができます。
最初の間引きは、本葉4〜5枚の時に行い、込んでいるところを間引きます。さらに、本葉6〜7枚で2回目の間引きをし、株間10〜15cmにして1本立ちにします。
間引きする時は、株の根元を手で押さえて、引き抜きます。間引き後は株元に土寄せをして、しっかり固定させましょう。
病害虫の防除

葉はキアゲハの大好物なので、見つけ次第、手で取り除きます。うどんこ病には水和硫黄剤(イオウフロアブル)などで防除します。

収穫

肥大した株から順次抜きとります。収穫適期は、五寸系の品種では長さ15〜20cmの肉づきのよいものです。年内は肥大が続くので、太りすぎて裂根しないうちに収穫します。8月まきではさらに土寄せして冬越しさせることで、葉が枯れた後でも適宜掘り上げて収穫できます。

ここがポイント2

又根とならないように
伸びていく根の先に、土の塊や石がある時、また未熟な有機物を使い、根に近い位置に肥料を施した時などに、又根が発生しやすくなります。さらに、幼根がセンチュウやハリガネムシなど土に潜む害虫の食害を受けた場合も又根になります。
これらの対策は、(1)連作を避ける、(2)堆肥と肥料は事前に施して、土とよく混和し深く耕す、(3)日頃から除草に努め、害虫の発生しにくい畑づくりをしておく、などです。
ここがポイント3

ニンジンの首を緑色にしない
ニンジンが太る部分は、発芽した時の軸(胚軸という)と根の部分です。光が当たると胚軸に緑の色素(クロロフィル)が作られて、首が緑に着色します。
そこで、間引き後はしっかり土寄せをしておくことが大切です。その後でニンジンの肩が土の上に出てきたら、もう一度土寄せしてください。
なお、凍害を受けると黒っぽく変色するので、冬越しする場合はさらに土寄せしましょう。
よくある失敗

発芽が悪いのですが、よい方法を教えてください。
夏まきニンジンは高温と乾燥で発芽不良となりがちです。最も効果的なのが、水やりです。タネまきの時に十分水やりしても、発芽が揃うまで水やりを続けないと、発芽しかかった芽が乾いて枯れてしまいます。そこで、タネまき前には土にしっかり水を含ませ、地表面からの蒸散を抑える工夫が必要です。そこで、水やりを効果的にするために次の対策を実行してください。
(1)タネまき前のまき床に十分水やりをする。
(2)乾燥防止に、もみ殻や切りワラを敷く。または不織布のベタがけをする。
野菜ソムリエ ジロウのおすすめ品種

根の先端まで太く、色が鮮紅色で肌のキレイな品種を選びましょう。さらに病気や生理障害に強いのが理想の品種です。


  • 向陽二号形がよく土質を選ばない、根割れしにくい五寸系の定番品種。

  • 恋ごころ濃赤色で甘みが強いのでサラダ、ジュースにも適している。

成松 次郎
神奈川県農業技術センターなどで野菜の研究と技術指導に従事後、(社)日本施設園芸協会で施設園芸および加工・業務用野菜の生産・流通振興に携わる。現在、園芸研究家、野菜ソムリエ。