トップ > 花のひろば > アジサイの魅力

アジサイの魅力

アジサイの魅力
おすすめ商品はこちら

花の咲き方は大きく2種類

  アジサイの仲間(アジサイ属)は、アジサイ科の落葉または常緑の低木またはつるで、アジアと南北アメリカに約30種が分布しています。日本にはガクアジサイ、ヤマアジサイ、ノリウツギ、タマアジサイ、ツルアジサイなど12種が自生します。また日本で栽培されるアメリカノリノキ「アナベル」とカシワバアジサイは北米の原産です。
  アジサイの花のように見える部分は、花粉を運ぶ昆虫を引き寄せるために、がくが変化したもので装飾花と呼ばれます。タネをつくる両性花はごく小さく、花序の中心部や装飾花の下につきます。
  装飾花が花序の縁につくものを「額縁咲き」、花房全体が装飾花になったものを「てまり咲き」と呼びます。


色と形がより多彩に

  園芸的に最も重要とされるのは、伊豆半島や伊豆諸島に自生する日本固有のガクアジサイです。この中からてまり咲きのアジサイが現れ、交配などによって数々の園芸品種が作出されました。18世紀にはヨーロッパに渡って品種改良が行われ、世界各地に栽培が広がりました。ガクアジサイやアジサイは、一般に土壌が酸性の場合は装飾花がより青くなり、アルカリ性で赤みが増します。このため同じ品種で色を変えて生産されるものもあります。
  ヤマアジサイは、日本と朝鮮半島南部に自生します。ガクアジサイに比べて全体に小さく、「七段花」などを代表とする数百種が園芸品種化されています。近年は、多彩なヤマアジサイの突然変異をアジサイに取り込むために盛んに交配が行われ、今までにない形質をもった新品種が作出されています。
  古くから栽培されるミナヅキはノリウツギの花が装飾花になったもので、アメリカノリノキの野生種の花が装飾花になったものが、「アナベル」です。


グループごとの環境と管理

  アジサイの仲間は栽培特性から大きく(1)ヤマアジサイ、(2)アジサイ、(3)北米産の種類・ノリウツギに分類できます。株の大きさや栽培環境、剪定方法が異なるので、育てる環境にあう品種を選ぶのが栽培を成功させるポイントです。
  次章からそれぞれの特徴とおすすめの品種を紹介します。アジサイとヤマアジサイの交配種はどちらかに近い特徴をもちますので、管理に適した方のグループで解説します。


ヤマアジサイの仲間

  ヤマアジサイやエゾアジサイの園芸品種は、野生から見出された変わりものや、それらを改良したものです。ガクアジサイやアジサイに比べ小ぶりで葉に光沢がないのが特徴で、清楚で野趣に富む姿が人気です。開花期は5月下旬~6月。
  半日陰で極端に乾燥しない環境を好みます。樹高は1m程度と小さく、鉢植えで栽培されることが多いのですが、適当な土壌の湿度が保てれば、庭植えもできます。


紅

  長野県で発見された紅色の代表的な品種。額縁咲きで、咲き始め は白く、日が経つうちにだんだんと赤みを帯びて最後には深紅にな ります。鉢植え向き。

アマチャ

  本州中部に分布するヤマアジサイの変種で、葉が細く、先が長く尖ります。アマチャとヤマアジサイは、灌仏会(かんぶつえ)に使用する甘茶の原料として用いられます。個体によりますが、葉を蒸して、乾燥、発酵させると砂糖の数百倍の甘みがあります。花は主に白色で、樹高は1mほどで、鉢植え、庭植えのどちらにも適しています。今回紹介するのは食用ではなく観賞用です。

※観賞用として販売しているものは食用にはしないでください。

アジアンビューティーシリーズ

  ヤマアジサイとアジサイを交配した品種で、ヤマアジサイに近い 姿です。鉢物、庭植えでも栽培でき、鮮やかな花色が特長です。
  「SAKURA」「KURARA」「KIMONO」「HITOMI」などの品種 があり、花色がバラエティーに富んでいます。

七段花

  シーボルトの「日本植物誌」に描かれていますが、日本では失われてしまい、昭和30年代に兵庫県の山中で同じものが発見されました。花は星形で、何段にも重なって八重になることから名づけられました。生長が遅いので、鉢植え向き。

アジサイの品種

  主としてガクアジサイやアジサイを交配したグループで、鮮明な花色や豪華な花房、光沢のある葉が魅力です。大きく育つ品種が多く、丈夫で日なたでも育てることができます。開花期は6~7月。
  選択のポイントは、鉢植えか庭植え向きかを知ることです。鉢植え用は、大きくなると樹姿が乱れたり、寒さや冬季の乾燥に弱いものがあります。また庭植え向きの品種は、生育旺盛で、庭でのびのびと大きく育てて花を楽しむことができます。


フェアリーアイ

  2006、2007年のジャパンフラワーセレクションでフラワー・オブ・ザ・イヤーを受賞した話題のアジサイです。花は濃いピンク、酸性土壌では青紫の八重咲きで、咲き進むにつれ額縁咲きからてまり咲きになるのが最大の特徴です。
  花もちがよく、夏に緑色になり、秋には赤に変化するので秋色アジサイとしても楽しめます。鉢植え向きの品種です。

ジャパーニュミカコ

  交配に多用される紅覆輪のヤマアジサイの品種「キヨスミサワアジサイ」とガクアジサイの交配種です。てまり咲きで、白地に赤紫の縁どりの対比が鮮やかな品種です。時間が経つにつれ、花全体が赤くなります。赤紫色として販売されていることもありますが、酸性土壌では紫色の覆輪になります。鉢植え向きの品種です。

加茂セレクション

ギャラクシー

  中輪のてまり咲きで小さな八重咲きの花が非常にたくさん咲く、かわいらしい品種です。花を星に見立てて、それが集まった花房を「銀河」(ギャラクシー)として命名。赤色で販売されていますが、酸性土壌では青色になります。丈夫で育てやすく、「ダンスパーティー」よりも生長が遅いので、鉢植えにも庭植えにも適します。

ラブリーハート

  鉢花用アジサイのほとんどは、庭に植えると1.5~2mに生長します。そのため鉢花としての見栄えがよくなるよう、伸長を抑える薬剤を使って草姿を調節するのが一般的です。
  「ラブリーハート」は、普通に育てても5号鉢(直径15cm)以下に適した大きさにしかならない、これまでにないコンパクトな品種。とても花つきのよいてまり咲きです。

ダンスパーティー

  花は明るい紅ピンク色の額縁咲きで、細弁の八重咲き。優雅な花姿で人気が高い、加茂セレクションを代表する品種です。生長が早いので、日光に当ててしっかりとした株に育てます。鉢植えで花を楽しんだ後に庭植えにするのがおすすめです。

オタクサ

  江戸末期に来日した医師シーボルトは、オランダに1000種類以上の植物を持ち帰りました。花の少ない初夏に咲く姿が印象に残ったのでしょうか、帰国後に著した「日本植物誌」で10種類以上のアジサイの仲間を紹介。その代表が「オタクサ」で現在の日本ではあまり見られません。近年フランスで発見され、日本に里帰りしました。鉢植えで観賞後、庭植えにするとよいでしょう。

北米産の種類とノリウツギ

  北米産のアジサイ、アメリカノリノキの園芸品種「アナベル」は、白い大きな花房が特徴。カシワバアジサイはその名のとおりカシワ(柏)のような形の葉で円錐状の花序に多数の花をつけます。葉も花も秋に美しく紅葉します。
  ノリウツギは寒さに強いため、ヨーロッパで盛んに品種改良が行われています。「ミナヅキ」のように装飾花になるもの、株が大きくならないものや夏から秋に美しく花が色づくものなど、さまざまな品種が発表されています。開花期はカシワバアジサイが6~7月、「アナベル」とノリウツギは6月中旬~7月です。

アナベル

  純白の花色が非常に印象的なアメリカノリノキの園芸品種で、装飾花が多数集まっててまり咲きになり、花房は直径約30cmに達します。日本のアジサイと同じく、特別な管理をしなくても毎年よく開花します。

ノリウツギ ライムライト

  日本にも自生するノリウツギの園芸品種で、はじめはライムグリーン、咲き切ると純白になる花で、円錐形の花房を作ります。開花後から秋にかけて花は紅色に変化しますが、夏に冷涼な気候の方がきれいに色づきます。

ピンクのアナベル

  アメリカで発表された新品種で、紅ピンク色のアナベルです。咲き始めは特に花色が濃く、咲き切ると多少淡くなります。花色以外はアナベルと同様で、栽培も容易です。

アジサイの育て方

倉重 祐二

倉重 祐二

1961年、神奈川県生まれ。新潟県立植物園副園長。専門はツツジ属の系統進化や栽培保全。近年は石川県能登地方のキリシマツツジ古木群や新潟を中心とした花卉園芸史の調査にも力を注いでいる。


おすすめ商品はこちら