冷蔵チューリップを楽しむ
チューリップは球根という姿で休眠していますが、夏から秋、秋から冬の気温の変化を受けて、球根内部では春に向けての準備を着々と進めています。
元々は切り花生産者用として、その季節の気温の変化を冷蔵技術でつくり、特別に早く冬を過ごさせて促成処理したのが、冷蔵チューリップです。
近年、温暖化などで春の気温が高いこともあり、春の花々の開花期間が極端に短くなってしまうことがありますが、冷蔵チューリップの場合は早めに冬に遭遇させているので、通常より1カ月くらい早く開花します。そのころはまだ寒さが残っていて気温が低い分、長い間花を楽しむことができるのです。
冷蔵チューリップのもう1つのメリットは、花が散ってから地上部が枯れるまでの期間も長くなること。つまり、次世代の球根が生長する期間が長くなることで球根の肥大がよくなるので、楽しみもぐんと膨らみます。
冷蔵チューリップもポイントを押さえれば、一般家庭でも庭や鉢、プランターに植え付けて楽しめます。
雪の降る地方では雪の下ではあまり動かずじっとしていますが、雪解け後から通常より早く萌芽し、早く咲きます。ただし、極寒地など地域によっては地面が凍結し屋外での栽培ができないこともあるので、屋内で鉢やプランターに植えてください。
水はけがよく、日の当たる風通しのいい場所が最適ですが、チューリップは半日陰でも開花します。鉢植えの場合は、植え付け後から萌芽するまでの1カ月くらいは日の当たらない場所で保管し、十分に根を張らせてください。その後は日の当たる場所で管理を。寒冷地や降雪地方では、鉢植えやプランター栽培をおすすめします。
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地植えの場合は土を耕してやわらかくし、通気性をよくする腐葉土(500g/m2)を混和します。排水性を高めることも重要なので、畝を立てるなどしてください。鉢植え、プランターの場合は、清潔でチューリップ用に配合された市販の培養土をおすすめします。
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球根到着時にはすでに休眠が破れているので、すぐに植え付けてください。
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地植えでは、球根の高さの約3倍の深さに植えます(約10cm)。株間は2〜3球分(約10cm)です。鉢植えの場合は5号鉢に3球が目安です。鉢底から10cmくらい用土を入れ、球根を植えます。球根が隠れるまで用土を入れ、その上に3〜4cmほど、用土をかぶせます。水をやると土が落ち着き、ちょうどいい深さになります。
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植え付けた直後はたっぷりと水やりします。その後は土の表面が乾いたら与えます。チューリップは水と一緒に根が伸びていくので、芽が出ていない間も定期的に行ってください。ただし、過湿にならないように気をつけましょう。
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基本的に、球根の力だけでも十分花を咲かせます。もし施肥をする場合は根焼けを起こさないよう、植え付けた後、緩効性肥料(50g/m2)を地表に施します。
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30年以上にわたって、球根の生産や流通に携わる。特に、「新潟県の花チュ−リップ」と「豪華な花のユリ」のスペシャリスト。チューリップを介してオランダと交流を重ねている。