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春から初夏の宿根草花壇

春から初夏の宿根草花壇
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  春、サクラが咲くとそれにつられるようにさまざまな花が咲き始めます。花木や球根、山野草類などとともに、シバザクラやサクラソウをはじめ、色や形のまったく異なる個性的な宿根草類が次々と入れ替わるように咲き、晩春から初夏へと季節が移っていきます。冬の間、じっと休眠していたものが一斉に芽吹いて開花し、夏以降に咲く種類と比べると草丈が低く小型のものが多く見られます。それでも草姿はさまざまで、這うタイプからこんもりと茂るもの、さらに縦長にすらりと伸びるものまで多種多様です。華やかなジャーマンアイリス、落ち着いた自然な雰囲気のゲラニューム類、ひっそりと咲くスズランなどのほか葉物も豊富で、花壇の広さや形状、日当たりの程度にあわせていろいろな組みあわせが可能になります。
  春花壇というと、チューリップなどの秋植え球根が主役になることも多いのですが、花が終わると急に寂しくなってしまいます。秋のうちに開花期の異なる宿根草を植えておくことで、主役が次々と入れ替わるような花の庭がつくれます。

  宿根草の植え付けの適期は10月くらいです。寒地は早めがよく、関東以西の平野部なら11月でも十分間にあいます。植え場所は、腐葉土などを混ぜてよく耕しておき、根が深くしっかりと張れるようにすることが大切です。開花期の大きさを考えて株間を十分とり、間にパンジーや早春に咲くクロッカスなどを植えておくこともできます。アジュガやリシマキア、ラミウムなどのグラウンドカバープランツで覆っておくのもよい方法です。冬の霜柱や凍結で株が浮き上がったり、乾燥するのを防ぐ効果もあり、バークチップでマルチングするのも株の保護や生育促進に役立ちます。寒さには強いものが多いので、土が凍っても雪に埋もれてもかまいません。冬の低温にあうことで春の芽吹きや開花が促進されます。
  毎年咲かせるには夏越しがポイントになります。用土の水はけとともに、開花後の刈り込みや周囲とのバランスを考えて蒸れないように管理することが大切です。

バーバスカム

  長い花穂を伸ばしながら、チャーミングな花を次々と咲かせます。縦長の草姿なので、花壇の中のわずかなすき間を利用することができ、植え込みにリズムとアクセントをつけるのによい材料です。花壇中央から後方の背景にも向き、点々と散らしても変化があっておもしろいものです。似たような草姿のジギタリスやデルフィニュームも同様に利用しますが、バーバスカムの方が高温多湿に強く、株の寿命も長いです。
  多くの園芸品種があり、フォエニセウムの「ビオレッタ」や「ロゼッタ」は早咲きの大輪種、よく似たタイプの「サザンチャーム」には黄花もあり、彩りとして加えるとよいでしょう。「ウエディングキャンドル」は、小花が密につき、やや晩生だが開花期間が長いのが魅力です。

ゲラニューム「エリザベスアン」

  マクラツムの品種で、赤紫色のシックな葉色が特徴。優しい草姿で周囲の植え込みにも自然に溶け込みます。性質は強健、数多いゲラニュームの中でも丈夫で作りやすく、春の新葉の展開とほとんど同時に咲き始め、咲きながら草丈40〜60cmに育ちます。色や形の異なるほかのゲラニュームと組みあわせてもよく、落ち着いた雰囲気の花壇がつくれます。「エスプレッソ」というよく似た品種があり、同様に利用できます。
  開花後は半分くらいの高さに刈り込んでおき、数年間は植え放しで手がかかりません。日なたから明るい半日陰まで幅広く適応し、芽数が殖えて広がってきたら、秋に株分けして植え直しをします。

ベロニカ「クレイターレイクブルー」

  目の覚めるようなコバルトブルーの花が、びっしりと株を覆うように咲きます。草丈は30〜40cmで、安定した草姿でバランスがよく、花壇の前面から中央部の植え込みに向き、2年目はさらに大株に育ち、存在感が増します。ベロニカの仲間は多種多様で、よく似たものも多く、好みで選べます。本種を中心に、手前に丈の低い「ジョージアブルー」など、後方には丈の高いルリトラノオ類などを配植するのもおすすめです。暑さ寒さに強く、開花後に半分くらいに刈り込むほかは、ほとんど手がかからず数年は植え放しで育てられます。肥料は少なめの方がコンパクトに保て、茎も倒れにくくなります。

フロックス

  シバザクラや夏に咲くオイランソウ(クサキョウチクトウ)の仲間で、春から初夏に咲く中間タイプには、ディバリカータやピロサ、カロリナなどの種類があります。草丈は20〜40cmで、花壇やコンテナに使いやすい大きさで、狭いスペースでも利用できます。
  ディバリカータやピロサは繊細で優しい草姿に比較的大きな花を咲かせ、根から不定芽を出して自然な感じに広がって咲きます。カロリナでは、濃桃色の「ビルベイカー」が、強健で株立ちとなり、多数の花が咲くのでボリューム感を楽しめます。
  いずれも春の開花のためには、冬の寒さに十分あわせる必要があります。開花後は10cmくらいの高さで茎を刈り込んでおきます。数年間は植え放しで育てられます。

セイヨウオダマキ

  愛敬のあるユーモラスな花形が人目を引きつけ、花壇のマスコット的な存在となります。欧州や北米の原種をもとに数多くの品種が育成され、好みで選べます。1株だけでも庭が明るくなりますが、何株もまとめるとまた違った魅力が出ます。タイプの異なる品種を組みあわせてもよいものです。
  「ウィリアムギネス」は、濃い紫と白の2色咲きで、深い味わいのある花を咲かせます。「イエロークィーン」は、矩(花の付け根の突き出た部分)が特に長く、今にも飛んでいきそうな感じです。いずれも、暖地では二年草扱いか短命な宿根草になりますが、タネで容易に殖えます。冷涼地では、植え放しで何年も花が楽しめ、こぼれダネで自然に殖えるほどです。庭植え、鉢植えいずれにも向き、日なたから明るい半日陰まで、わずかなスペースでも育てられます。

ユーフォルビア キパリッシアス

  「マツバトウダイ」とも呼ばれ、草丈10〜20cmほどで、地面をびっしりと覆い、花壇の縁取りや、石組み、階段のすき間を埋めるのによい材料です。中〜大型の草花の株元に配植すると自然な風景がつくれます。緑葉のほか、赤紫の葉が美しい「クラリスハワード」も同様に使われます。ユーフォルビアは種類が多く、中型種ではポリクロマ、大型種ではロンギフォリアなどが丈夫で使いやすく、大きさやタイプの異なるものを組みあわせてもよいものです。
  いずれも日当たりを好み、乾燥したやせ地でもよく育ちます。水はけをよくしておき、蒸れないよう注意します。開花後もしばらく形や色が残るので長く観賞できます。数年間は植え放しでよく、キパリッシアスは根からも不定芽を出すので、2年目以降はかなりの大株に育ちます。

サルビア プラテンシス

  春咲きの耐寒性の強い宿根サルビアです。すらりと伸びた長い花穂が印象深く、草丈は60〜80cmほどになり、花壇後方の植え込みにも適しています。大輪で花数が多くボリュームもあり、2年目以降は大株に育ってさらに迫力が増します。株元や手前には、小型で黄や桃、白などの花を咲かせる植物を組みあわせるのもおすすめです。濃青紫色の「ラプソディーインブルー」など、いくつかの品種があり、ほかの春〜夏咲きの宿根サルビアとはかなり違った使い方ができます。
  別名は「メドウセージ」で、別種のガラニティカがメドウセージの名前で流通するので紛らわしいのですが、本来はこちらが本物のメドウセージです。花後もドライフラワーのようにしばらく観賞できますが、早めに切り戻すとわき枝が伸びて2番花が咲きます。

シンフィツム イベリカム

  コンフリーの仲間ですが、草姿はコンパクト。草丈30cmほどでこんもりと茂り、鐘形の花が鈴なりに咲きます。淡いクリーム色をベースに、赤や青の色がほんのりと入り、とてもチャーミングな花です。木陰などの腐植質の多い湿り気のある所を好み、プルモナリアに似た雰囲気もありますが、性質はプルモナリアよりも強く、株もよく殖えます。2年目になると大株に育ち一面に花が咲いて見事です。生け垣の株元や塀の際など、日当たりのよくない所を明るく華やかに彩ります。斑入りアマドコロやキバナホウチャクソウなど、すらりとした草姿の植物と組みあわせるとより効果的です。

アムソニア

  チョウジソウの仲間で、青い星形の花が房になって咲き、さわやかな印象を受けます。草丈は50〜80cmと比較的高く、花壇では目立つ存在となり、縦長の草姿なので、ほかの花ともあわせやすく、こんもりと茂るタイプのものを株元に植えるとバランスがよく、自然な雰囲気が出せます。北アメリカ原産のタベルナエモンタナ種の利用が多く、日本のチョウジソウよりも大型で花数が多く、丈夫で育てやすい種類です。品種や個体によって花色の濃淡など多少異なります。
  開花後は半分くらいに刈り込んでもよいし、細長い実がなるので、しばらく観賞することもできます。数年間は植え放しでよく、株もよく殖えるので、不要な枝は刈り込んで茎の本数を制限しておくとよいでしょう。

リクニス フロスククリ「ジェニー」

  カッコウセンノウの八重咲き品種で、花の中心部が大きく盛り上がるように咲き続け、一輪が一カ月くらい観賞できます。一重咲きのものとはずいぶん趣きが異なり、花壇の中でもよく目立ちます。花弁が細く優雅な花ですが、ボリュームもあり、草丈40〜50cmほどで多数の花を咲かせます。春らしいピンクの華やかな花なので、カラーリーフプランツやほかの草花ともよくあいます。
  秋に苗を植え付けたら、冬までにしっかり株作りをしておくと、春の花立ちが多く豪華です。日当たりと水はけのよい所であれば丈夫で作りやすい植物です。肥料も少なめの方が株のバランスがよく、特に春の伸長期からは肥料分を少なくしておくと、雨でも茎が倒れにくくなります。開花後は刈り込んで蒸れに注意します。

タナセタム ニベウム「ジャックポット」

  小ギクやマトリカリアに似た清楚な花が、株全体に散らばるように咲き、メタリックなシルバーリーフも魅力的です。草丈40〜60cmほどですらりとした草姿ですが、花数が多く枝分かれして広がるので、ボリューム感もあり、花壇の中央部に植えるのにも適しています。コンテナの寄せ植えにも使いやすく、草丈の低い花や這うタイプのものと組みあわせるとバランスよくまとまります。
  日当たりを好み、水はけのよい所で育てます。しっかりと根が張ったものは、かなりの乾燥にも耐えます。開花後、入梅の頃に半分くらい刈り込んで蒸れないようにしておきます。

ポレモニューム「ステアウェイトゥヘブン」

  草丈30〜40cmほどで丸くこんもりと茂り、ふんわりとした草姿と、パステル調のソフトで明るい色彩が特徴。銅葉系の植物と組みあわせるとお互いがよく引き立ちます。レプタンスの斑入り葉品種で、この仲間はハナシノブの類の中では特に性質が強く育てやすい種類です。黄緑色の葉で、春の新葉は斑の部分の白さがよく目立ち、夏にはやや黄色っぽくなります。枝分かれしながら次々と淡いブルーの花を咲かせます。木陰などの明るい半日陰に向きますが、直射光にも強く、ほとんど葉が傷むことなく、開花後もカラーリーフプランツとして利用できます。花がらも葉と同じような色あいなのでしばらくそのまま利用できます。入梅のころには軽く刈り込んでおくとすっきりします。

コガネグルマ

  北アメリカ原産の耐寒耐暑性の強い常緑性宿根草です。草丈は20cmほどで、茎葉が密に茂り、横に広がって大株に育つので、花壇の縁取りなど、グラウンドカバープランツとして利用できます。横に伸びた茎が地面につくとそこから発根してさらに生長を続けます。黄金のような鮮やかな黄色の花が次々と長い期間咲き続け、花を咲かせながら株が順に大きくなります。中心部が衰えることなく、草姿の乱れもないので扱いやすい花です。日なたから半日陰まであまり場所を選ばず、コンテナの寄せ植えにも利用できます。花がらもあまり気になりませんが、7月ごろ、花が一段落したら半分くらいに刈り込んでおくとよいでしょう。秋にもポツポツ咲くことがあります。

小黒 晃

小黒 晃
種苗会社に勤務し、主に宿根草の導入、試作に携わる。一般公開している宿根草ガーデン(山梨県北杜市)の管理を担当。日本における宿根草研究の第一人者で、宿根草全般の栽培特性に造詣が深い。テレビや園芸雑誌で宿根草の魅力を紹介。日々の細やかな観察からのアドバイスが好評。

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