宿根草特集
宿根草とは、毎年特定の季節になると花を咲かせ、身近で楽しむことができる草本性の植物のことで、ガーデンで植物を栽培する時にはなくてはならない存在です。宿根草は丈夫で育てやすく、1度植え付けると数年は植え替えの必要がありません。ローメンテナンスというのは宿根草の最大の魅力といえます。さらに、花や草姿が多様性に富んでいて、いろいろな楽しみ方ができるのも宿根草の大きな魅力です。ポット苗1株から大株に育てるおもしろさもあります。
草丈は低い矮性タイプから、人の背丈ほどになる高性タイプの種類まであり、利用目的に応じて上手に組みあわせることで、奥行き感を出して空間を立体的に演出できます。また、開花時期などは植物の種類や品種をずらすことにより、一時期にすべての花を愛でるのではなく、ガーデンのあちらこちらで長期にわたって花を愛でる魅力もあります。どの植物と組みあわせて共演を楽しむか、毎年新たな発見ができるので、見飽きることがありません。繊細な草姿の宿根草が風で揺れる姿というのもまた魅力的で、花壇に動きをもたらす演出ができます。種類によっては切り花にもできます。咲いた花を自宅で飾るだけでなく、自分で育てた花をプレゼントにするというすてきな楽しみ方もできます。
最近では花だけではなくカラーリーフを楽しむ宿根草も多数登場してきています。花がない時期でも、ワンポイントとして存在感を発揮してくれるので、ぜひ花壇に加えたいものです。これから夏に向かって開花する魅惑の宿根草と、そのおすすめ品種をご紹介しますので、ぜひお気に入りを見つけてガーデンに加えてみてください。
北米原産のキク科の植物。和名の「バレンギク」は、江戸時代の町火消が使用した纏についた房飾りに花弁を見立てたことに由来します。人気急上昇中の宿根草の一つで、毎年新しい品種が登場しています。すらっと立ち上がった花茎の先端部に大輪の花を咲かせます。一重〜八重咲きがあり、特に一重咲きは、花弁の中央の花芯がチクチクとハリネズミのように盛り上がっている姿がユニークです。八重咲きタイプもモコモコと盛り上がっています。花色も白、桃、黄、橙、赤、緑などカラフルで、草丈も矮性(約30cm)〜高性(約1m)と品種によって異なり、利用目的にあわせて花色や草丈を幅広く選択できます。1株だけでも目立って美しいのですが、大株にして群落で楽しむのも華やかでおすすめです。
日光が大好きなので、よく日光の当たる水はけのよい場所に植え付けます。風で揺れる姿も美しいのですが、高性タイプは支柱をしてサポートすることも大切です。花が終わりに近づいたら、早めに剪定しておくと2番花を楽しめます。1年目より2年目、3年目と大株になり花つきもよくなります。株分けをする時は、あまり細かく分けないように注意してください。
ラベンダーピンクのモコモコ盛り上がる八重咲きの品種。コンパクトにまとまりボーダーガーデンなどでも楽しめる。花つき抜群の品種。草丈35〜45cm。
濃緑色から開花が進むと淡緑色へと花色が変化する品種。ツンツンとした花芯がユニーク。草丈50〜60cm。
燃えるような赤が鮮烈で、八重咲きで豪華な印象の品種。遠くからでも目立ち、花壇のアクセントとして効果抜群。草丈50〜70cm。
北米原産のキク科の植物で属名のヘリアンサスでも流通しています。夏に花を咲かせる一年草タイプも同じ仲間ですが、ヒマワリに似た花で宿根タイプということで、宿根ヒマワリという名前で呼ばれています。手間いらずで、毎年大株になって花を咲かせてくれます。日光が大好きなので、よく日光の当たる場所で管理します。すらっと伸びた花茎の先端部に数輪の花を咲かせます。
ややまぎらわしいのですが、同じ宿根ヒマワリの名前や宿根ヒメヒマワリの名前でヘリオプシス属の花も出回っています。花や草姿が似ているため、混同されて流通していることが多いようですが、よく観察してみると違いがあります。ヘリアンサス属は、花後に花弁が散ってしまい、葉は巨性で葉に細かな毛が多くザラザラしています。ヘリオプシス属は、花後でも花弁が散らずにある程度は残り、葉は対生で、表面にはあまり細かな毛はありません。栽培上の管理は同じなので、花色の変化や花形などを上手に組みあわせて、楽しんでみるとよいでしょう。どちらも花もちがよいので切り花としても楽しめるのも魅力です。
ヤナギバヒマワリの別名がある細葉の宿根ヒマワリ。一重で黄色花弁と黒芯とのコントラストが美しい。開花が夏後半からと遅めだが、秋まで花が楽しめるので、一緒に花壇に加えておくのがおすすめ。初夏のころに1度切り戻すと、バランスよい姿で楽しめる。草丈1.5〜2m。
オレンジがかった濃い黄色で、八重咲きのボリューム感たっぷりの品種。夏らしい印象的な花色で、一度は育ててみたい品種の一つ。草丈1〜1.5m。
鮮やかな黄色で、花芯がユニークなコラレット咲きの品種。年々大株になって多数花が咲くのも魅力。草丈60〜70cm。
ヘリオプシス属だが、花姿は「ハッピーデイズ」に似ている。草丈が高くなるので、切り花として楽しむのにも向いている。草丈80〜100cm。
北米原産のキク科の植物。一年草タイプと宿根草タイプがあります。一年草タイプは、春先にタネをまいて育てますが、宿根草タイプは、毎年大株になるのとこぼれダネでもよく殖えます。花色は黄色〜褐色系が中心。近年はグリーンの花を咲かせる品種も登場してきています。日当たりがよく、水はけのよい場所で管理します。特に風通しのよい場所に植え付けるよう気をつけます。極端に水切れをさせてしまうと、葉先から茶色くなって枯れ込むことがあるので真夏の水やりに注意しましょう。品種によっては、草丈が高くなるタイプもあるので、初夏のころに切り戻しを行い調整します。花が終わってもモコモコした花芯を楽しむことができますが、早めに切り戻しておくと2番花が楽しめます。
宿根ルドベキアを代表する品種で、黄色い花弁と黒い花芯のコントラストが美しい。ダークグリーンの葉とのバランスもよい。草丈80〜100cm。
ゴールドイエローのすらっと伸びた花弁の品種。コンパクトにまとまり、全体のバランスがよい。英国でも人気の注目の品種。草丈30〜40cm。
北米原産のシソ科の植物。ここ数年人気の宿根草の一つです。アガスターシェといわれるとピンとこない方もいると思いますが、葉の香りが特徴で「アニスヒソップ」の名でハーブとして利用されているものもあります。すらっと伸びた花茎に穂状にトランペット形の筒状花を咲かせます。花色も豊富で紫、赤紫、ピンク、オレンジ、白などがあります。
生育が旺盛なので生長しながら次々と花穂を立ち上げ、花を長く楽しめます。夏場は水切れに注意が必要です。花穂の7〜8割が咲いたら、切り戻しておくと2番花、3番花を楽しめます。葉色が魅力的な品種もあり、花がない時でもカラーリーフとして利用できます。ほかの植物とのカラーコーディネートを考えるのも楽しく、寄せ植えにするのもおすすめ。また単鉢で大株作りにすると、たくさん立ち上がる花穂のボリュームある姿がとても魅力的です。
オレンジ色の花と灰色がかった葉色とのコントラストが非常にしゃれた印象。ユニークな花姿は切り花としても楽しめる。草丈35〜40cm。
やや赤紫みを帯びた筒状の花が、下から次々と咲く。シックな銅葉は季節によって濃淡があり、それもまた魅力の一つ。草丈35〜40cm。
日本、および中国原産で、ワスレグサ科(もしくはユリ科)の植物。ヘメロカリスというと聞き慣れない名前かもしれませんが、キスゲやユウスゲの仲間です。一日花であることから「デイリリー」という別名もあり、すらっと伸びた花茎に大きな花を多数咲かせる姿は優雅でとても魅力的です。花色も黄、オレンジ、赤、クリーム、ピンクなど豊富で、花の大きさも小輪から大輪、咲き方も一重から八重とバリエーションに富んでいます。また、草丈も矮性から高性まで品種によって異なるので、用途に応じての品種選びも楽しみの一つです。
丈夫で育てやすく手間いらずというのが、最大の魅力です。よく日光の当たる場所でがっちりと生育させ、1〜2年作り込むと数本の株立ちになり100輪以上の花を夏中楽しむことができます。切り花として、花茎を切って次々と花を長く楽しむのもおすすめ。花が2日間もつ品種や、一般的には昼間咲く品種が多い中で、夕方に開花するタイプも登場しています。
珍しい八重咲きタイプの品種。ワインレッドの光沢のある花弁は遠くからでも目立つ存在。1度咲いてから再び花茎が立ち上がり、返り咲いてくれるのもうれしい。草丈40〜60cm。
黄色の一重咲きの花は、花弁の外側の覆輪と中心部が濃赤褐色になり、そのくっきりしたコントラストが非常に美しい。夏場に花咲く宿根草は、遠くからでも目立つインパクトも大切。草丈40〜60cm。
ユーラシア、および南北アメリカ原産のバラ科の植物。和名の「ダイコンソウ」は、葉姿がダイコンの葉に似ているところから付けられたものです。一般的には黄色やオレンジ赤の一重の品種や半八重の品種が多く、株元から立ち上がった花茎に数輪の花を咲かせます。日光が大好きなものの、夏場は半日陰になるような場所で管理するとよいでしょう。株元から葉が展開するので、蒸れないように水はけよく風通しのよい環境づくりを考えて植え付けを行います。大株になると品種によっては、蒸れてダメになることもあるので、1〜2年に1回は株分けして、コンパクトな株姿で楽しむように心掛けます。葉姿と花姿がかわいらしく、鮮やかな花色は遠くからでも人目を引くので花壇に加えるとアクセント効果抜群です。
真紅の花が遠くからでも目立つ八重咲きのボリュームあふれる品種。次々と長く花を咲かせ、ガーデンでも多数の花を楽しめる人気の品種。草丈50〜70cm。
今までにないパステル調のアプリコットカラーの品種。咲き進むとピンク系に変化する。半八重咲きの花は、黄色しべとのコントラストが絶妙。生育が旺盛で育てやすい。草丈45〜50cm。
南アフリカ原産のキク科の植物。すらりと伸びた太い花茎の先端に豪華な花を咲かせます。切り花でおなじみのガーベラですが、最近では鉢植えで楽しむポットガーベラもよく出回ります。数年前からガーデンガーベラといわれる庭植えできる宿根草タイプが登場して、今まで以上に丈夫で育てやすく、寒さにも強くなり、新たな花壇材料として非常に注目されています。花色も豊富で、赤、白、桃、黄、オレンジなど、ビビッドな色のほかソフトな中間色もあります。花立ちもよく次々と花を咲かせ、秋深くまで長く開花を楽しめるのも魅力です。
よく日光が当たり、水はけがよい場所を選び、やや浅めに植え付けを行います。株の中心部に光が当たるように、重なっている葉がある場合は、葉切りをして調整します。花もちもよく、切り花としても使い勝手がよいので、大株にして育ててみたいおすすめの宿根草です。
耐暑、耐寒性に優れ、鉢植えだけでなく庭植えでも楽しめる新しいタイプのガーベラ。鮮やかな花色はパッと目にとまり、花壇の中でも存在感を示す。草丈30〜40cm。鮮やかな赤花の「グロー」は花径7〜8cmの大輪品種で大株にして楽しみたい。「サニー」は花径4〜5cmで、輝くような黄色が夏らしい雰囲気。
北米原産のキク科の植物。アスターには一年草タイプもありますが、冬季に株が残り毎年大株になって楽しめる宿根アスターも数系統あります。多くの品種はいくつかの原種を交配して改良されたものです。宿根アスターの中でも草丈が高くボリューム感のある丈夫で育てやすいタイプは、初夏から夏の花壇で使いやすくおすすめです。一重だけでなくボリュームのある八重咲きタイプ、花色も白、桃、藤色などがあります。日光が大好きなので、日当たりのいい場所で育てます。春から伸びた新芽をそのまま伸ばすと1m以上になってしまうので、初夏のころに切り戻すことによって、コンパクトな株姿で花を楽しむことができます。切り花で使いたいなど、草丈を高くしたい場合は、支柱などでサポートして折れないように気をつけてください。
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小さくて素朴な花はナチュラルガーデンによく似あう。
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華やかな八重咲き品種は切り花アレンジにもおすすめ。
フウロソウ科の植物で世界各地に自生します。古くはゼラニュームと同じ属だったのがペラルゴニューム属へ移行しましたが、昔の属名がそのまま残りゲラニュームと呼ばれています。別名の「フウロソウ」でもよく知られています。大別すると、高山系(矮性)と草原系(高性)に分類され、庭で楽しむには草原系の品種がおすすめです。株立ちになり直立または斜めに茎を伸ばしながら次々と花を咲かせていきます。長く花が続いてくれるのも魅力です。楚々とした印象の一重咲きだけでなく、近年はボリューム感のある八重咲きのタイプも登場しています。花後にできるタネの形も個性的なので、ぜひ確かめてみてください。
矮性の品種でボリューム感のある八重咲きタイプ。白地に赤紫のワンポイントが入る花が美しい。草丈40〜60cm。
シックな印象で人気の高い黒花フウロソウの中でも特に黒みが強く美しい品種。花も大きめで花壇の引き締め役として活躍。草丈約50cm。
1962年千葉県生まれ。幼少のころより園芸に親しみ、園芸店、生花店などで勤務。宿根草についても豊富な知識を持ち、NHK「趣味の園芸」の講師としても分かりやすい語り口で人気。クレマチスの造詣が深く、著書も多数ある。日本クレマチス協会理事。