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山野草を咲かせよう

山野草を咲かせよう
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フジバカマ

  日本原産の花で、古くは『万葉集』に山上憶良(660〜733年)が“秋の七草”の一つとして歌を詠んでいます。しかし、現在、出回っているフジバカマのほとんどは日本産ではなく、花がやや紫色を帯びる中国産の「濃色フジバカマ」や、「フジバカマ」と「サワヒヨドリ」との交配品種である「サワフジバカマ」です。
  後者の交配品種「サワフジバカマ」は、茎が赤みを帯び、葉が上部まで3裂になっています。これらの葉が秋に乾燥すると、クマリンという成分により、高貴な香りを漂わせます。落葉時のカツラや桜餅のオオシマザクラの香りも同じ成分をもっています。匂い袋に詰められることもある、この上品な香りを晩秋に楽しむためにも、ぜひ1株は身近で育てたいものです。

植え付け適地

よく日の当たる、水はけのよい場所が適しています。ただし、乾燥を嫌うので、十分に水やりのできる場所が条件です。

植え付け方法

ボリュームのある宿根草なので、地植えにするとよく広がります。広がってほしくない場合は、仕切り板などで対処します。
鉢植えから地植えに移すのは、真夏をのぞき年中可能です。粘土質など水はけの悪い土壌の場合は盛り土にして水の滞留を防ぎます。

12月〜翌年4月に植え付けや植え替えを行います。用土は、水はけも水もちもよい用土を使用します。

管理方法

乾きすぎないよう、水を与えます。鉢植えは表面が乾いたらたっぷりと与えましょう。

植え付け時に元肥として、リン酸の多い緩効性肥料を5号鉢当たり小さじ1杯程度与えます。春〜夏はチッソ、リン酸、カリなどの液肥を月に1回、標準希釈で与えます。

風通しが悪いと、うどんこ病が発生したり、コナジラミが発生したりすることがあります。うどんこ病は、水で流したうえで市販の薬剤で対処します。コナジラミは黄色の害虫捕獲粘着紙などで防除します。葉脈が黄色く染まるウイルス罹病株は治らないので処分します。

鉢植えは、放置すると根が張って、水分や空気の通りが悪くなり、やがて弱っていきます。早いうちにサイズのあった鉢に植え替える必要があります。


シュウメイギク

  シュウメイギクは、学名を「アネモネ・ヒュペヘンシス」といい、中国原産と考えられているキンポウゲ科イチリンソウ属(アネモネ)の宿根草です。和風にも洋風にも、いずれの庭でも調和がとれる花なので、重宝されています。
  中国四川省では、標高数百mの石灰岩がゴロゴロした場所に、白とピンクの野生種の株が見られました。野生種を栽培すると、種子が風に乗り雑草化します。また、京都の貴船の付近には人家近くに「キブネギク」と呼ばれる八重咲きのシュウメイギクが多産しています。
  日本最初の園芸書『花壇綱目』(1681年)に登場しているぐらい、シュウメイギクは古くから知られた花です。現存するものは台湾の種類や四川などの「アネモネ・トメントサ」と関係しているともいわれ、歴史的に不明な点もあり、今後も注目される、古くて新しい植物といえるでしょう。

植え付け適地

日当たりのよい場所のほか、直射日光の当たらない明るい場所でも栽培できます。ただ本来は、葉に日光が当たるのが好ましい姿です。地植えでは極端な例として、砂利や花崗岩礫など水はけのよい場所で元気に育ちます。

    ※ 原産地は低山ですが、北海道など寒冷地でも冬越しに問題があったという話は聞いたことがありませんので、寒い場所でも栽培が可能です。
植え付け方法

将来、大株に育っても用土の水はけが悪くならないように、植え付ける周囲も日向土などを混ぜて土壌改良を行いますが、水はけのよい用土であれば特に場所を選びません。粘土質の場合は、軽石や日向土など5〜10mm粒の土8:腐葉土2のように、排水性、保水性のよい用土を盛り土にして育てます。

水はけのよい、適度に保水性のある用土に植えます。

管理方法

乾燥が続く時は、早朝か夕暮れ時にたっぷりと時間をかけて水が浸み込むように水やりをします。十分土を湿らせれば、数日は水を与えなくても大丈夫です。鉢植えの場合は、表面が乾いたらたっぷりと水をやります。

多数の花をつけたいか、風情を感じるほどの数の花を咲かせたいかによって肥料の与え方は違います。無肥料でもほどよく花はつきます。地植えでは3月に遅効性肥料を小さじ1杯程度、鉢植えでは3月と9月に遅効性肥料を小さじ半分程度与えます。

風通しが悪いと、うどんこ病が発生します。発生したら、まず水で洗い、治らない場合は市販の薬剤で処置します。白絹病は水はけの悪さや腐葉土が未熟でも発生します。ほかにヨトウムシの被害もあります。害虫のふんを確認したら、用土中のチェックや夜の見回りも有効です。

植え替えが適切に行われていない鉢植えは、根づまりして枯死を招きます。3〜5月または9〜10月に、鉢の大きさの調整をしながら植え替えを行います。


ダイモンジソウ

  渓谷の岩場など、涼しくて、絶えず水分がある場所に生える秋の山野草です。岩場では、ほかの水分を好む植物とうまく調和をとって生き延びています。
  最近では「ミヤマダイモンジソウ」などとの育種も進み、赤花や八重そして花弁に切れ込みのあるものなど、元来の野生の静かさとは対極にある、華やかな品種が出回るようになりました。
  鉢植え以外にも抗火石への石づけなど、自然に近い育て方もおすすめです。ダイモンジソウの仲間には同じ半日陰、水分を好むジンジソウ、センダイソウ、春に咲くエチゼンダイモンジソウ、ハルユキノシタなどもあり、一緒に植栽して楽しむことができます。

植え付け場所

水分さえあれば日なたでも育ちますが、水が切れると傷みます。無難なのは、直射日光の当たらない場所です。周囲に木が多いなど、水分が切れにくい環境がおすすめです。水やりが頻繁にできる場所で、地植え、または鉢植え、あるいは石づけして栽培します。

植え付け方法

周囲に木が多いなど、水分が切れにくい環境のもとで石を組み、ポケットにケト土やコケを使って、イワギリソウやイワタバコなどと一緒に栽培します。用土は、硬質鹿沼土5〜7:日向土などの軽石類5〜3で混合します。いずれも約5mm粒がおすすめです。

地植えと同じような環境下で栽培します。用土には鹿沼土を多めに使用しますが、凍ると用土が微塵化します。冬が終わるころに植え替え、1mm目のふるいで水洗いにより微塵抜きを行い、不足分を新しい用土で補います。

自然な形でダイモンジソウを楽しめる植え付け方法です。抗火石などを金属ヘラで少し彫り込み、ケト土に日向土などの5mm粒を20%ほど加えて植え付けます。ケト土は山ゴケで隠します。

管理方法

乾燥防止のために、水やりはまめに行います。鹿沼土やケト土は一度乾燥させてしまうと水をはじくので注意します。鉢植えでは、受け皿に新しい水がたまる程度に水やりすれば、乾燥を防ぐことができます。

肥料としては植え付け時と、春の花後に有機性固形肥料を与えます。

ヨトウムシの被害にあうことがあります。ふんを確認したら、用土中のチェックや夜の見回りをしましょう。

植え替えは3〜4年に1度行います。


ホトトギス

  日本の山野には、10種類あまりのホトトギスが分布しています。しかも、草丈の低いものから高いもの、また下垂する種類もあり、花色は白、紫斑、黄と幅があります。中でも「ホトトギス」「ヤマジノホトトギス」「キバナノホトトギス」「タカクマホトトギス」「タイワンホトトギス」は丈夫です。
  また、ホトトギスの名前で出回る台湾や西表島などの「タイワンホトトギス」と「ホトトギス」の交配種もよく親しまれています。そのほか、ちょっとしたコツで栽培できる「ジョウロウホトトギス」類、「キバナノツキヌキホトトギス」など、日本が誇るホトトギスは幸い増殖も容易で、特に山野草の世界や自然風庭園でますます人気が出てくるでしょう。

植え付け場所

ホトトギスやタイワンホトトギスの交配種などは日なたでも平気ですが、そのほかの種類については明るい日陰で育てるのが無難です。また、乾燥を嫌うので周囲に樹木のあるような場所が適しています。

植え付け方法

丈夫なものは生育範囲が広がっていくので、仕切り板を入れます。特にタイワンホトトギス系は地下茎でどんどん増殖していきます。いずれも、水はけ、水もちのよい日向土6:赤玉土3:硬質鹿沼土1の約5mm粒を使って栽培します。

水はけ、水もちのよい日向土5:赤玉土3:硬質鹿沼土2などの約5mm粒を使って栽培します。下垂タイプは、腰高の鉢がおすすめです。

管理方法

葉へ霧状に水分を与え、乾燥により葉が傷まないようにします。

植え替え時、元肥としてリン酸の多い遅効性の化成肥料を、一株当たり小さじ半分程度用土に混ぜます。3〜5月は完熟油かす団子を月に1回与えます。6〜9月はリン酸の多い液肥を規定の半分の薄さで月2回程度与えます。

虫害としてルリタテハの幼虫の食害にあうことがありますが、チョウを呼ぶバタフライガーデンのように、多めに栽培して虫との共生も可能です。

地植えは数年に1度の目安ですが、水の通りが悪くなった場合は植え替えるか、棒などでついて透水性をよくします。鉢植えは1年に1度、少なくとも2年に1度は植え替えたいものです。

気品のある「キイジョウロウホトトギス」類を育てよう

下垂する「キイジョウロウホトトギス」類は腰高の鉢で栽培します。ただし、日当たりに注意する必要があり、直射日光や乾燥で葉が簡単に傷んでしまいます。夏は二重鉢にして周囲からも湿気を取り入れ、同じ環境に生えるシダや「ヒトリシズカ」などと一緒に育てるのもおすすめです。うまく秋まで葉も傷めないで花を咲かせることができると、山野草の世界でちょっとした自慢となりますよ。

          

※ キイジョウロウホトトギスの弊社での販売はありません。


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久山 敦

久山 敦
山野草の探索のため、これまで51カ国を訪問。淡路ファームパークの設計・管理の後、現在は大阪市の「咲くやこの花館」館長を務める。