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マグノリアって?花の咲く季節や種類を解説

マグノリアって?花の咲く季節や種類を解説

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アメリカやニュージーランドで品種改良が盛んに行われている

枝いっぱいに白花を咲かせるハクモクレンは、春のすがすがしい空気感によく似合う。

サクラより少し先に、大きくふっくらした花を枝が隠れるほどに咲かせるモクレンやコブシ。そのおおらかな姿に春の訪れを実感する方も多いと思います。日本で広く親しまれているモクレンやコブシはモクレン科モクレン属ですが、同じモクレン科のオガタマノキ(ミケリア)属やモクレンモドキ属まで含み、モクレン科の仲間をマグノリアと呼んでいます。種類が非常に豊富で、特にアメリカやニュージーランドでは、日本産のモクレンをベースにして盛んに品種改良が行われているため、今後も新しい品種が登場する可能性が高く、21世紀を担う花木といえるでしょう。

もう一つ、マグノリアが21世紀を担うであろう理由があります。それは、暑さにも寒さにも比較的強く、広い地域で栽培可能なこと。そして病害虫の被害も少なく、栽培管理が容易なこと。この連載で再三ご紹介している、新樹種のキーワード「ローメンテナンスで美しい」をまさにかなえてくれるのがマグノリアなのです。私たち植木生産業者にとって優れた指導者で、日本の植木育種・生産の第一人者でもある、柴道昭氏がマグノリアを集めているのも、これから先も大きな期待ができる花木だからでしょう。

品種選びのポイントは適した樹高を見つけること

マグノリアの品種選びで一番のポイントになるのが樹高です。種類が多いだけに樹高もさまざまあり、高木に育つもの、中木程度のもの、そして最近では草丈40〜60cmとグラウンドカバーに最適なオガタマノキも登場しています。スペースがない所に樹高が高くなる品種を植えると、剪定の手間が増え、ローメンテナンスというマグノリアの特長を生かせなくなってしまいます。どのくらいまで高くなっても大丈夫か、それを見極めてふさわしい樹高の品種を選ぶようにしましょう。ニュージーランドで育種された「フェアリーマグノリア」は樹高が2〜3.5mで、しかもよく葉が茂るので、簡単な剪定で樹形を整えれば、しゃれた垣根にも利用できます。クリームホワイトの花がたくさん咲く垣根、なかなかすてきだと思いませんか。

モクレンといえば紫や白の花色がすぐに思い浮かびますが、最近では優しいクリーム色のものや、さらに黄みを帯びた「エリザベス」も登場しています。また、シックな濃紫色の「ブラックチューリップ」など色のバリエーションも増え、新鮮な印象を与えることができるので、庭や家のテイストにあわせて選択してください。

また、芳香が楽しめるのもマグノリアの魅力の一つです。品種によって強弱があるので、品種選びの際にチェックするとよいでしょう。

黄色がかったクリーム色の花をさかせるモクレン「エリザベス」。 フェアリーマグノリア「クリーム」は、葉がよく茂り、葉色も明るく垣根の利用に最適。 淡いピンク色花の「ブラッシュ」もある。

注目のマグノリア×6

モクレン「エリザベス」

マグノリア「アクミナータ」とハクモクレンの交配種で、チューリップのような形をしたクリームイエローの大輪花が人気です。花色は初めはやや緑がかり、咲き進むにつれクリームイエローに変化します。若木のうちから花を咲かせる、比較的花つきのよい品種です。優しいクリームイエローの花色は、ほかの植物との相性もよく、足元に植える低木類や草花との組みあわせを考えるのも楽しみです。鉢植えで観賞することもできますが、狭い庭などの地植えにも最適です。あまり大きくしたくない場合は、花が咲き終わった後に強めに剪定するとよいでしょう。耐寒性、耐暑性ともに優れ、育てやすい品種です。北海道以南で生育可能。

優しい花色なので門周りにシンボルツリーとして植えるのもおすすめ。8号鉢以上のサイズなら鉢植えでベランダ栽培も可能。 モクレンには少ない花色が新鮮な印象。

モクレン「ブラックチューリップ」

春の透き通る青空に向かって伸びる枝先に咲く深い紫紅色の花が映え、春の訪れを感じさせてくれます。チューリップを思わせるふっくらと丸みのあるカップ状の花はかわいらしく、上品な香りもあります。花弁の表裏ともに深い紫紅色です。花が終わると葉が展開して涼しげな木陰をつくってくれます。また、秋には黄色く紅葉する葉も特徴の一つで、1年を通して楽しむことができます。花の色や形の美しさ、花つきのよさ、枝振りなど、どこをとっても優れた品種で、シンボルツリーとしてもおすすめです。耐寒性、耐暑性にも優れています。全国で栽培が可能。

丸い抱え咲きでボリューム感のある花形も魅力。 蕾のうちから存在感がたっぷり。

モクレン「ハクモクレン」

マグノリアの代表品種。数ある花木の中でとてもポピュラーな品種の一つです。かすかな芳香のある純白の花が樹冠いっぱいに咲く様は、春の澄んだ青空に映え、一際美しさが目を引きます。モクレン科の中でも早くから開花が始まります。庭のシンボルツリーとしても品格のある花木です。耐寒性、耐暑性ともに優れ、病害虫の心配もほとんどありません。北海道以南で生育が可能。

純白の花は清潔感があり優雅な印象。 満開の時期には枝が隠れるほど花つきがよい。

フェアリーマグノリア「クリーム」

ニュージーランドの育種者によって生み出された、‘Michelias’のハイブリッドの改良品種です。花径7〜10cmで、クリームがかった白花が優しい印象。個々の葉脈に1〜2個の花芽がつくので、たくさんの花を咲かせます。また、開花期間も一般的なマグノリアより長く、たくさんの花と葉、密な枝でコンパクトなブッシュ状になる樹形も特徴の一つです。葉が明るい緑色なので、花のない時期も暗い印象になりません。刈り込みをして樹形を整えても花が咲くので、生垣に利用したり、大きな鉢で楽しむのもおすすめです。耐寒性はありますが、寒さが厳しいと落葉することもあります。葉張りは2〜2.5m。北海道以南で可能。

大きな花は存在感があり、優雅な芳香も楽しめる。 葉がよく茂り、樹形を整えやすいので生け垣にも最適。

カラタネオガタマ「パープルクイーン」

独特な深みのある紫色の花がとても印象的な品種。華やかに目立つ色ではありませんが、庭に植わっているとそのシックな色あいが目を引きます。花つきがよくシンボルツリーとしておすすめです。寒さにはそれほど強くないので関東以南での栽培をおすすめします。関東地方でも寒さにより生育が阻害されることがあるので防寒対策などの注意が必要です。また、真冬など寒い時期の剪定も避けた方がよいでしょう。日当たりを好みますが乾燥、多湿は嫌がるため、なるべく適湿を保つようにします。それほど強くはありませんが、甘い香りも楽しめます。

花にはバナナのような甘い香りがある。 シックで上品な紫紅色の花は、和洋どちらの庭にもよく似合う。

オガタマノキ「フリースピリット」

直径6〜8cmの白花の常緑品種です。ミケリア系には珍しく、地を這うようなユニークな樹形をしています。咲き始めの花は丸みを帯びていて上向きに咲くので、地面が明るい雰囲気になります。非常に花つきがよく、次々と花を咲かせます。比較的生長が遅く、大きくなりすぎないため、狭いスペースにも最適。低木でありながら、グラウンドカバーとしても利用でき、汎用性が高い品種です。甘く誘惑的な芳香があり、樹高が低めなので、その香りを存分に楽しむことができます。半日陰でも生育が可能なので、シェードガーデンを彩る1品種としても魅力的な花木です。枝張りは1.5〜2m。

低い位置で上向きにぱっと咲く花がよく目立ち明るい印象。 グラウンドカバーに利用できる低木で、これほど花がよく咲く種類は珍しい。

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小林 隆行(こばやし たかゆき)

小林 隆行(こばやし たかゆき)
埼玉県生まれ。アメリカのネブラスカ州立大学園芸学科を卒業後、家業の植木生産業を継ぎ、2008年に社長就任後は、国内外の植物に対する知識と海外経験を生かし、新しい植物を海外から導入し、広めている。