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庭先で育てるおいしい果樹〜よい果樹を実らせるコツ〜

庭先で育てるおいしい果樹〜よい果樹を実らせるコツ〜

果樹栽培は「適地適作」が基本 よい環境づくりを目指そう

今回は「おいしい果樹」を育てるための基本として、環境、土づくり、肥料について分かりやすく説明しようと思います。

家庭で果樹を栽培する魅力は、完熟果のおいしさを味わえること。健やかに育つ環境を整えれば、実りが充実する。

「これまでいろいろな植物を育てた経験があるが、果樹栽培は初めてだ」「果樹を植えたことがあるけれど、途中で枯れた」「実はついたが、おいしくない」「果物屋の店先で見るような形や大きさにならない」。 こうした方を対象に、まずは改めて果樹とはどんなものなのか、ほかの植物とどこが共通でどこが違うのかを確認したいと思います。

私のいう果樹とは、「実った果物が食べられる」「食べておいしい」「加工や料理に利用できる」ことが基本条件と考えています。 鉢栽培の果樹を「どうせ観賞用でしょ」といわれたことがありますが、それは私の意図する果樹ではないのです。 この基本条件を満たすために最も重要なことは、健全な木づくりと健全な花を咲かせることです。

健全な木とは、環境に適合性があり、栽培に必要な水、栄養素と光を十分に利用できる状態の木です。 それを満たすために、とても簡単なようでいてとても大事なことがあります。 果樹栽培で昔からいわれている「適地適作」です。 例えば、山に自生しているカキ、ヤマブドウ、アケビなどを見ると、それらは人の手を借りることなく、栽培に必要な要素を自力で得て生存し続けています。 つまり私たちも栽培しようとする果樹に適した場所で育てれば、何もしなくても自然に育ち、収穫できるのです。

環境を整え、よい土づくりをすれば、よい花が咲き、よい実がつく。

しかし、実際には栽培する果樹の種類にあわせて栽培地を変えることは不可能です。 逆にいえば、栽培しようと決めた時から、何かしらの手間がかかるのが果樹であり、適地適作になり得ない条件を確認し、それを解決していくことが果樹栽培のポイントになるのです。 かといって、その条件を事細かに見つけ、それぞれに適合する環境づくりをすることはプロの農家でもなかなか難しいことです。 寒さ、暑さ、乾燥、過湿といった条件を物理的に変更することは手間やお金をかければ不可能ではありません。 しかし、肥料や水の吸収率を安定的に維持し、悪天候で光条件が不足した時でもそれに耐えうる適合力を備えることは物理的に簡単にできるものではありません。 したがって、異常気象が当たり前のようになってきた現代には、それらに対する抵抗力(私はこれを「木の緩衝力」と呼んでいます)これこそが栽培を成功させるための最も大事な条件であると思っています。 そして、これを司るのが「よい土づくり」です。 よい土がなければ、よい花も咲かずよい実をつけることもできないのです。

実りをよくするためにはよい土づくりがキーポイント

肥料や農薬の進歩が、なぜか土づくりの必要性さえも否定してきたような、近年そんな気がしてなりません。 土づくりをおろそかにすれば、木が本来もつべき「緩衝力」をなくし、気象条件の異変に対応できない木になってしまうのです。

土は人間の体でいうと胃腸です。 食べたものを適度に消化しながら、そして適度に維持し続けることができる胃腸――植物の世界に戻るならば、根から吸収する前に肥料や水を蓄える場所が土ですが、それがちゃんと機能を果たさないと、木は常に栄養分や水分を失って生長が鈍くなり、生理障害が起きやすい環境にさらされることになります。 この不安定さに異常気象が重なると、木はより多くのストレスを抱えることとなり、花も咲かず実もつかない、ついてもマズイ、ということになりかねません。

では、よい土づくりとは実際にはどんな土にすればよいのか。 それは適度な水もち(保水力)、適度な腐植(保肥力)、そして十分な根のはびこるスペース(根域)がすべて完備しているということです。 特に、これらは植え付け前、最低3週間前には準備しておきたいものです。 「明日植えるから、または苗木を今買ってきたのでこれから土づくりをする」というのは果樹栽培では非常識なスタートなのです。

有機物を十分に施してふかふかの土をつくる

根は呼吸をして生きているので、土の中には十分な空気と水が必要になります。 水はけが悪いと、水やりの際に土中の空気を追い出してしまい、空気不足が原因で生育不良になって根は枯死してしまいます。 このため、土は適度な水もちのある、団粒構造をつくるようにしなければなりません。 そこで、牛糞堆肥や腐葉土などの有機物を十分に施すことが必要です。

また、果実の味をよくするには土中にバランスのとれた肥料成分が含まれることが重要ですが、それ以上に適当に水分が切れる水はけのよい土にすることが第一の条件です。

特に最近の宅地造成では、埋め立て用の土は、あちこちの心土または粘土などの廃土が利用されています。 植え付ける場所を中心として少なくとも半径1mの土はよく耕して(中耕)、そこに牛糞堆肥や腐葉土を混合して、土の表面を常にふかふか(膨軟)に保つようにします。 また、もともと水はけが悪い場所では、定植する際、盛り土にして植えてやることも有効です。

適度な腐植土のつくり方

土に堆肥や腐葉土などの有機物を毎年投入しないと、土中の腐植は年々減少します。 この腐植は、根を十分に張らせるため、また肥料の吸収をよくするためには欠かすことのできないものです。 例えば50m2くらいの庭の場合、年間に堆肥類を50kg程度補給しないと果樹が十分に生育することはできません。 堆肥類は自身でつくることもできますが、牛糞堆肥や樹皮(バーク)堆肥、腐葉土を購入して施すのがよいでしょう。

堆肥類の施用方法には2通りあります。 1つは木の周囲に堆肥類をばらまき中耕して土とよく混ぜておく方法です。 もう1つは木の周囲に溝を掘って、その中に堆肥類を入れてやる方法です(図1)

前者の全面散布方法は2〜6月に行い、あまり時期に制約はありません。 しかし溝掘法の場合は、根をたくさん切ることになるので、2月中旬〜3月中旬が適期です。 なお、注意が必要なのは、水はけが悪い庭の場合です。 深い穴を掘ると雨が続いた時に穴の中に水がたまってしまい、根に悪い影響がでるので、全面散布方法にする方が安全です。

【図1】堆肥の施し方

肥料は果樹にとっての食事 バランスよく栄養を与える

人でいえば肥料は食事です。 堆肥と肥料を同じものであると考えている方もいるようですが、肥料は食事、堆肥はよい胃袋をつくるためのツール、いわば土壌改良材であることをよく理解してください。

しかし、必要以上に食べさせると肥料障害をもたらし、不足すると元気がなくなり、活動が鈍るので人間とまったく同じです。 肥料の成分としては、チッソ、リン酸、カリが主力で、ほかにマンガン、マグネシウム、亜鉛、ホウ素などの微量要素があります。 この肥料成分が偏らないように上手に組みあわせて施用します。 これらのバランスが崩れると果実の味が悪くなったり、花つきが悪くなったりします。

家庭での果樹栽培では有機質肥料がおすすめ

果実の生育を助けるためにも施肥のタイミングを逃さずに。

肥料の種類は大きく区分すると、有機質肥料と、化学肥料の2通りがあります。 有機質肥料は天然物を肥料としたもので、油かす、魚かす、豆かす、骨粉などがあります。 これらは肥効が現れるまでに日数がかかるので、遅行性肥料とも呼ばれています。 家庭での果樹栽培では、有機質肥料が最適です。 濃度障害が起きにくく、肥料切れが出にくい、さらに化学肥料を使用した場合よりも果実の味がよくなるからです。 私はこれを生で使用するのではなく、油かすを水につけて適度に腐熟したものを骨粉と混ぜて固めたものにして使用しています。 この連載でも、肥料といえばこの固形肥料を指すと覚えておいてください(図2)

化学肥料は硫安、過リン酸石灰などで、工場で製造された化合物肥料です。 肥効も早く、便利ですが、施用量を間違えると根に障害を起こしやすいので注意が必要です。 ちなみに、配合肥料は有機質肥料と化学肥料をバランスよく配合したもので、化成肥料はチッソ、リン酸、カリを配合してつくったものです。

【図2】有機質固形肥料のつくり方と与え方

肥料の上手な施し方

施肥時期は、若木の場合は木を大きくするのが最大の目的なので、チッソを主体にして、12月、1月、2月の養水分吸収力の弱い時期を除いて、毎月に分けて施します。 成木では春肥を3月中旬、夏肥を6月中旬、秋肥を11月中旬に施します。 また、花つきの多い年には、5月と9月に追肥を行って、幼果や果実の生育を助けるようにします。

施肥量は、木の年齢、樹勢、土の種類によって一定ではありませんが、次の分量を目安としてください。 成木では年に3回、配合した固形有機質肥料を、1本につき200cc入りのコップに3杯を毎回施用します。 若木では1本にコップ1杯ぐらいを目安とします。 また、夏の乾燥時には、若木には水やりを兼ねて、バケツ1杯の水に、尿素をひとつまみ(2g程度)入れて施すと生育が旺盛になるので、衰弱ぎみの場合は有効です。

肥料の施し方は、2通りあります。 10年以上の木では、根は全面に張っているので、一部分だけでなく全面に肥料をばらまき、あとで中耕をします。 5年生から10年生の木では、根の張っている部分が樹冠直下の付近までなので、そこに輪状に深さ5cm程度の溝を掘って施肥します。 溝に施肥する場合は、限られた所に肥料を施すので、必要以上に与えると濃度障害を起こしやすいため、化学肥料は特に使わないようにします。 この場合も、施肥後は土とよく混ぜてやります。

大森 直樹(おおもり なおき)

大森 直樹(おおもり なおき)
1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。