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春まきの「一年草」「二年草」で庭づくり

鮮やかな花色、愛らしい花姿を生かして 春まきの「一年草」「二年草」で庭づくり 夏から秋にかけて花咲く植物には、魅力的な一年草がたくさんあります。毎年繰り返し咲く宿根草とは違い、その年の気分にあった花選びを楽しめるのも一年草ならではの魅力です。ちょうど4〜5月は夏の花のタネまきシーズン。今年の気分で選んだ花をタネから育て、花壇で咲く伸びやかな姿を楽しんでみてはいかがでしょう。また、来年の初夏に花咲く二年草も同時期にタネまきできるので、早めに苗作りをしておくのがおすすめです。

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春まき一年草はタネまきから開花までが比較的早い!

初夏から秋の花壇に咲くマリーゴールドやサルビアなどは、春まき一年草と呼ばれ、春にタネをまけば秋遅くまで長く花を楽しむことができる植物です。タネまきから開花し、枯れるまでが1年以内なので「一年草」と呼ばれています。春まき一年草の多くがメキシコやブラジルなど熱帯、亜熱帯の気温が高い場所を原産地とするため、私たちが育てる時も気温が上がり、寒さの心配がなくなった春からがタネまきの適期になります。
一年草でつくる花壇は、タネまきから花が咲くまでの期間が比較的短く、夏から晩秋まで生育しながら次々と花を咲かせます。手入れをすれば花数が増え、伸びた茎を切り戻すことで思うように花壇全体のバランスを整え、長く楽しむことができるのが最大の魅力です。
毎年、タネの注文をする時期になると「次はどんな花壇にしようかな?」と、悩ましくも楽しい時間を過ごします。イメージ通りの花壇になるか、その結果を見るのが楽しみで、花色を変えてみたり、テーマを決めて植物を選んだりして工夫しながら花壇づくりを楽しんでいます。
草丈の高くなる植物を加えると驚くほどボリュームが出て花壇が立体的になります。市販の苗は「矮性」といってコンパクトに収まるように改良された草丈の低い品種が多いのですが、タネから育てると、元気に育った伸びやかな姿を見ることができ、花壇がナチュラルな雰囲気になります。育てやすいおすすめの一年草をご紹介しますので、ぜひこの春から初夏にタネまきして育ててみてください。

花色、花形、花の大きさなどが異なる種類を組みあわせよう!

まずは花壇の場所をよく見て日当たりや乾きやすさを知っておきましょう。夏の直射日光がよく当たる場所や縁石の近くなどには、乾燥に強く日当たりを好むものを植えるようにします。
主役にしたい花を選んでから、似あう植物を組みあわせていくのもいいですし、主な花色を先に決めてから、その色の濃淡や反対色を少し入れてもすてきです。花や葉の形にも注目して、異なるタイプを組みあわせることが花選びのポイントです。花が大きなものと小花、キク科の丸い花とサルビアやアンゲロニアのような縦長になる花、などです。前後左右、隣接する花や葉を考えながらお互いを引き立てあうように選んでみましょう。


草丈が高くなるセンニチコウの足元に草丈が低めのトレニアを組みあわせて。植物選びの際には草丈も考慮することが大切。


カラーリーフや斑入り葉などを上手に利用すると花壇にボリューム感が出るので、花の咲かない時期も寂しい印象にならない。


朱赤のサルビア、黄色のアフリカンマリーゴールド、濃いピンクのセンニチコウなどビビッドな色の組みあわせは夏らしさを感じさせる。

初心者は扱いやすい大きなタネの植物から試して!

これからの時期にタネまきできる一年草はたくさんあります。タネまきに慣れていない方は、ジニアやセンニチコウなど、タネが大きな種類から挑戦してみましょう。タネが細長いマリーゴールドもまきやすくおすすめです。
直まきのほか、セルトレイやポットにまいて育苗してから定植する方法もあるので、花の種類に適した方法を選びます。いずれの場合も発芽までは乾かさないように注意し、明るい日陰に置きましょう。発芽後は、元気のよい芽を残して間引き、明るい場所に移します。水のやりすぎに注意して苗が徒長しないように育てます。

花を咲かせたい時にあわせてタネまき時期を調整しよう!

「春にタネをまく」というと「4月?」と思われるかもしれません。春まき一年草には、いつ咲かせたいのか?を考えてタネをまく楽しさもあります。
夏、夜温が下がらずに熱帯夜が続く地域では、暑さで花が弱り咲きにくくなるサルビアやフレンチマリーゴールドを見かけることがあります。秋風が吹くころになると復活し色鮮やかになって美しい花壇になっています。関東以西の温暖な地域では、タネまきを遅く、6月中下旬にして、秋に開花のピークがくるように育てることもできます。秋の補植用に育てておくのもおすすめです。
コスモスなど、台風の季節に草丈を高くしないで咲かせたい場合もタネまきを遅くして育てます。

長く元気に咲かせるために大切なのは土づくりと植え付け時期

花壇に花苗を植える際、「よく耕して」といわれています。まず、なぜ耕すのか?を考えてみましょう。植物の根が伸びていきたくなるような土とは、空気を含んでやわらかく、栄養があり、いつも適度な水分を保持しながら、不要な水がない状態です。それを目指して、土の深さ30cmほどよく耕してから、腐葉土や堆肥を混ぜ込みます。これらを混ぜることで、排水性、保水性(保肥性)のよい状態が長く続きます。
植え付けは梅雨明けまでに根を活着させるように 行います。梅雨の間に根が十分に張れていれば夏の暑さや強い日差しの中でも元気に咲き続けることができます。植え付け後の水やりも大切です。一株一株にたっぷりと行い、根鉢と新しい土を密着させます。

秋遅くまで長く楽しみたいなら「切り戻し」を繰り返して

夏の間は伸びたら切り戻し、わき芽を育てて花数を増やしながら株が大きくなり過ぎるのを防いで楽しみます。秋からさらに美しく咲かせるためには、夏の終わり(関東以西の温暖な地域の場合は、8月下旬〜9月初め)に思いきって切り戻し、粒状の有機配合肥料などで追肥を施します。そうすることで、秋から花色がさらに鮮やかになった花壇を長く楽しむことができます。

タネから咲かせたいおすすめ一年草

アフリカンマリーゴールド
●キク科 ●花期:7〜10月 ●草丈:20〜100cm
太く直立した茎に大きな花が咲く、花壇の主役になる花で、和名は「万寿菊」。草丈が低いものはコンテナに、40〜50cmの品種は花壇の中央に、高性種は大きな花壇に植えれば存在感を発揮します。1番花が咲く前に摘芯すると枝数が増えて次々と咲きます。花がら摘みをこまめにし、伸びたら思い切って切り戻しをするとわき芽が伸びてさらにたくさん花を咲かせます。


アフリカン系のマリーゴールドは大輪で存在感大。オレンジから黄色、クリーム色までの明るいグラデーションは夏の花壇を華やかにしてくれる。


「キクミックス」は、たくさんの花びらが重なる豪華な花で日本のキクを連想させる。草丈が80〜100cmと高くなるが、切り戻して低めに咲かせることもできる。


クリームホワイトの花色が涼し げな「F1バニラ」は、どんな花ともよく似あう。草丈が約40cmと低めなのでコンテナにも利用可能。

ジニア
●キク科 ●花期:6〜10月 ●草丈:25〜100cm
ジニアにはいくつもの種類があり、それぞれ花壇材料として優れています。花色、草丈、花形が豊富で花壇では主役から脇役まで役者が揃っています。どこに、どの品種が似あうのか、考えながら選びましょう。大輪の品種には、センニチコウの球状の花やガウラのような小花が多く咲く種類とあわせると花の大きさが引き立ちます。カラフルな花色を楽しみたい時には、中輪の混合種がおすすめです。


「ザハラ」シリーズは草丈30〜40cmで、群植すればボリューム満点。1株を上手に育てると大株になり見事。鮮やかな花色は花壇の中央向き。


リネアリス種の矮性一重咲き「プチランド」シリーズは、花径3〜4cmの小花をたくさん咲かせる。特に白花は、どんな種類ともなじんですてきに見える。


ライム色が珍しい「ジャイアント ライム」。草丈が約100cmで、足元が寂しくなりやすいので、アゲラタムなどよく茂る花との組みあわせがおすすめ。

センニチコウ
●ヒユ科 ●花期:7〜10月 ●草丈:20〜100cm
細い茎の先に球状の花が咲く様子がかわいらしい花です。葉が幅広いグロボーサ種と細長く葉の印象が薄いハーゲアナ種があるので、花の形を強調したい時には、後者を選ぶのがおすすめです。派手さはないのになぜか目立つ、そんな印象に残る花です。切り花やドライフラワーにも利用できます。


「ストロベリーフィールズ」は、草丈70cmほどになる高性のハーゲアナ種。写真はヤリゲイトウとの組みあわせ。花形が異なり、お互いをより引き立てる。


花の姿がほかのセンニチコウと違って球状にはならない「ファイヤーワークス」。細い茎なのに丈が100cmほどになっても倒れることなくよく咲く。

アンゲロニア
●ゴマノハグサ科 ●花期:7〜10月 ●草丈:25〜35cm
連日の猛暑でも涼しげに咲く細長い花房は、丸い花が多い夏の花壇では貴重な引き立て役です。開花中でも、茎の下方にはわき芽ができているので安心して切り戻しができます。


花色は涼しげな白のほかピンク、紫などもある。

ペンタス
●アカネ科 ●花期:夏〜晩秋 ●草丈:20〜30cm
暑い夏が大好きな頼もしい花で、星形がとても愛らしい印象です。発芽温度が約22℃とやや高めなので、タネまきは慌てずに5月になってから行うとよいでしょう。


濃淡ピンクの花色もキュート。暑さに強く育てやすいのも魅力。

葉色が美しい一年草

環境の厳しい夏の花壇では、花だけでなく葉色がきれいな種類を積極的に植えておくと、花が咲かない時期も美しい景色が楽しめます。花色との組みあわせを考えて葉色を選ぶようにしましょう。

コリウス
●シソ科 ●観賞期:6〜10月 ●草丈:40〜100cm
花色の鮮やかさに勝るとも劣らない美しい葉、それがコリウスです。色や模様のバリエーションが豊富に揃っているので、ほかの草花との色あわせもいろいろ楽しめます。花は、咲かせずに切り戻しを繰り返すと新葉が常に出揃いきれいです。切ることで草丈を調節できる扱いやすさも魅力です。


「ヴェルサ クリムソンゴールド」は、ディープレッドにゴールデングリーンの縁取りがよく目立ち、花壇でも存在感を示す。

アルテナンテラ
●ヒユ科 ●観賞期:6〜10月 ●草丈:40〜90cm
魅力的な葉色が人気のアルテナンテラは、気温が高くなるほど生育旺盛になってよく伸びます。ダークパープルの葉が美しい「パープルナイト」は、ペンタスの濃い赤紫やピンク系の花とあわせても、黄色系とも相性抜群です。


人気品種の「パープルナイト」。耐暑性に優れ、日差しが強いほど葉色が濃くなる。

バジル
●シソ科 ●観賞期:6〜10月 ●草丈:40〜90cm
ハーブとしておなじみのバジルですが、花壇で使いたいおすすめ品種は濃い紫の葉が魅力的な「ダークオパール」という品種。かわいいピンクの花を咲かせるか、それとも何度も切り戻して丈を低く葉色を楽しむか、方針を決めて育てましょう。


「ダークオパール」の濃い葉色は花壇の引き締め役に最適。触るとさわやかな香りがして幸せな気分に。

夏の終わりから秋に咲かせたい一年草

春まきの一年草で花壇をつくるなら、秋の計画まで立てておくのがおすすめです。夏の終わりから秋にかけて花咲く種類を育てておけば、より長く花壇を美しくキープできます。

ダリア
●キク科 ●花期:6〜10月 ●草丈:30〜50cm
明るい花色で花壇を華やかにしてくれるダリアも春にタネをまけば手軽に苗作りができます。特に気温が下がり始めると花色が冴え、より美しい花が楽しめます。


「レッドスキン」は、八重咲きタイプで、草丈が約50cmと低めで扱いやすい。シックな銅葉とカラフルな花のコントラストが美しい。

ダンギク
●クマツヅラ科 ●花期:8〜10月 ●草丈:60〜80cm
紫の小花を段々に咲かせる姿がとても涼しげ。乾燥や強い日差しに強く、育てやすい草花です。夏の初めに一度切り戻せば草丈を低めに調節できます。切り花としても利用できます。


「段菊」という名前から和風の印象を受けるが、繊細な花姿は洋風のナチュラルガーデンにもよく似あう。

フウセントウワタ
●ガガイモ科 ●観賞期:8〜10月(実) ●草丈:約100cm
かわいらしい白い小花が咲いた後、直径5〜8cmほどの風船のようにふくらんだ実がつきます。アクセントとして花壇に加えるのもおすすめ。


実の形はユニークだが、薄緑色が優しく、目になじみやすい。

来春の開花を楽しみに二年草もぜひ加えたい!

5〜6月にタネをまくと開花は翌年5〜6月になる二年草。草丈が高くなってボリュームが出ることや、花が大変美しいので植えておくと花壇が華やかになります。一年草をタネまきする時に同時にまけば手間も省けます。

本葉が茂り始め、そろそろ定植適期を迎えるカンパニュラ メディウムの苗。

カンパニュラ メディウム
●キキョウ科 ●花期:翌年5〜6月 ●草丈:約100cm
花の形から「フウリンソウ」や「ツリガネソウ」とも呼ばれ、白、ピンク、紫などの花色がある。育てた苗は、晩秋にパンジーやキンギョソウなどと一緒に花壇に植え付けるとよい。翌春、気温が上がると急に草丈が伸び、5月中旬以降に開花する。倒れるのが心配な場合は、草丈より低く、目立たないように支柱を。切り花にも利用できるのでたくさん咲かせて楽しみたい。


ピンク色と紫色のメディウムが咲いた晩春の花壇。優雅な姿が持ち味。

宿根サルビア アルテミス
●シソ科 ●花期:翌年5〜6月 ●草丈:60〜90cm
茎葉が細かい毛で覆われ、銀白色の姿が美しいことから「シルバーセージ」とも呼ばれる。春にタネをまいて育てると大株になり開花する。寒さが心配な場所では、春先に定植するとよい。


白い花と明るい葉色がさわやかな初夏の花壇。

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山 浩美
山×高瀬計画室代表。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒業後、造園会社に勤め植物園や緑地の維持管理を担当する。「育てる園芸」「人と関わり共に楽しむ園芸」をキーワードに、タネから苗を育てたり、地域での花壇づくりボランティアを育成する事業などに取り組んでいる。著書に「はじめての宿根草」(講談社)など。