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野菜作りの名人が選ぶ! 2017年の注目野菜

野菜作りの名人が選ぶ! 2017年の注目野菜 そろそろ2017年の野菜作りの計画を立てるシーズンです。どの品種を作ろうか、迷って決められないこともあると思います。そこで、野菜作りのマスターたちはどんなふうに品種を選んでいるのかお聞きしました。今年の野菜作りにぜひお役立てください。

2017年の注目野菜一覧はこちら

川城 英夫さんからのアドバイス 選ぶポイントはユニークさや機能性成分、ベストセラーにも再注目

家庭菜園では、まずはおいしい品種や色や形がきれいだったり、ちょっと変わった珍しい品種、カロテンなどの機能性成分が豊富なものなど、特徴のある品種を選ぶのがおすすめです。よく使う野菜なら、病気に強い、トウ立ちしにくい、裂根などの生理障害が出にくいといった作りやすさや、根菜類ではスが入りにくいと長く収穫できるので、こうした特性があるかどうかもポイントになります。
今、私の注目はシーザーサラダによく使われるロメインレタス。これはハクサイのような形で、ゆるく結球します。肉厚でシャキシャキ感が強くて味が濃く、炒めても浅漬けにしてもおいしく、皆さんにもっと食べていただきたい野菜です。玉レタスより栽培しやすい点でもおすすめです。
また、長年栽培され続けるニンジン「向陽二号」などのベストセラー品種も手堅いですし、機能性成分カロテンとリコピンを豊富に含むニンジン「京くれない」や、血液サラサラ効果のあるケルセチンが豊富な「ケルたま」などのファイトリッチ品種も見逃せません。

ニンジンの手入れ中。毎年多数の品種を試作して、品種特性をチェック。ニンジンの手入れ中。毎年多数の品種を試作して、品種特性をチェック。

川城 英夫さん
千葉県農林総合研究センター育種研究所長などを経て現在、JA全農主席技術主管。農学博士。主な著書に「いまさらきけない野菜づくりQ&A」、「野菜づくり畑の教科書」(家の光協会)、「新 野菜つくりの実際」(農文協)など多数。

春まきでもトウ立ちしにくい極晩抽性品種

ダイコン「トップランナー」
ダイコンを春まきする際に問題となるのがトウ立ちですが、この対策におすすめしたいのが「トップランナー」です。この品種は極晩抽性でトウ立ちしにくい特長があり、安心して栽培できます。関東以西の中間地ではマルチ栽培で3月下旬ごろ、さらに不織布でベタかけをすれば3月上中旬からタネまきができます。首が淡い緑色でス入りが遅く、サラダやおろし、煮ても浅漬けでもおいしく食べられます。

作りやすくておいしいベストセラー品種

ニンジン「向陽二号」
晩抽性と耐暑性を兼ね備え、一品種でオールシーズンをカバーできる画期的品種が「向陽二号」です。肌がきれいで、ニンジン臭が少ないので、お子さんも食べやすくジュースでも楽しめます。
根部の病気や障害が出にくく、粘質の土壌でも栽培できる広い土壌適応性など、その作りやすさは家庭菜園でも威力を発揮するでしょう。昭和60年に発売されたころから見てきましたが、いまだにニンジンのベストセラーのすごい品種です。

おいしく作りやすいイチオシ品種!

レタス「ロマリア」
ロメインレタスの中でも群を抜いておいしく、作りやすいのが「ロマリア」ではないかと思います。火を通してもシャキシャキ感が失われず、結球すると中が鮮やかな黄色になり、ほんのり甘みも感じられます。晩抽性もあるため、盛夏期の栽培を除いて幅広い時期に栽培できます。レタスはアオムシやコナガなどの害虫がつきにくく、「ロマリア」は春まきで植え付け後わずか45日前後で収穫できるのも魅力です。軽くゆでてお浸しにしたり、浅漬けやゴボウサラダと混ぜてもおいしくいただけます。

白石 好孝さんからのアドバイス 気温が上がってくる季節 じっくり育てられる品種を選びましょう

以前、市場出荷向けに野菜作りをしていた時の品種選びのポイントは、収穫が安定している、収量が多い、病害虫への耐性の三つでした。でも、直売に切り替えてからはおいしさが最優先です。直売であれば形が不揃いでも、一度にたくさん収穫できなくてもかまわないので。むしろ、収穫時期がずれていた方が皆さんに長く楽しんでいただけます。
農家でも家庭菜園でも大切なのは「適期適作」。年明けからの品種選びは春作となりますが、春まきは徐々に気温が上昇していく環境を考えると、暖かい中でもじっくり育つ品種が適します。秋まき品種は寒くなってもどんどん育つため、それを春まきするとトウ立ちしやすくなりますので、ダイコンやホウレンソウなどは注意が必要です。逆にトウ立ちしやすい点を利用できるのが茎ブロッコリー「グリーンボイス」。ブロッコリーは一般的には秋作ですが、側枝花蕾をたくさん収穫したい茎ブロッコリーは、むしろ春作の方が適しています。今回選んだおすすめは果菜3点ですが、夏の果菜類の植え付けにはまだ間があるので、その前の畑でぜひ試してみてください。

白石さんの畑で雄花が開花した「おひさまコーン7」。白石さんの畑で雄花が開花した「おひさまコーン7」。

白石 好孝さん
東京都練馬区大泉で300年以上続く白石農園の園主。消費地に隣接するため、少量多品種の直売農業を実践。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」(137区画)を主宰。小さな畑で年間20種以上の野菜を収穫するノウハウを指導。

シャキシャキのおいしい実がたくさんとれる!

トウガラシ「甘とう美人」
大きな実がたくさん収穫できる甘長トウガラシです。容易に栽培できるので、体験農園にも取り入れたところ大人気に!実が大きくなっても肉質が薄くてやわらかく、シャキシャキした食感。体験農園の生徒が1株で何個収穫できたか数えてみたら、小さな実も含めてなんと600個もとれたそうです。

濃厚な甘みで大満足のおいしさ!

スイートコーン「おひさまコーン7」
この品種はただ甘いだけじゃない。コーンがもつうまみが凝縮されたおいしさで、味が濃いんです。だから1本食べると大満足。スイートコーンは朝が一番甘みがのるので、朝どりして食べてみてください。皮のまま電子レンジで3〜4分加熱し、冷めてから食べるのがおすすめです。

とろけるような肉質で麻婆ナスによくあう

ヒモナス「紫剣」
白石農園でも体験農園でも定番で作るナスは「とげなし千両二号」。でも少しだけ変わり品種を加えてほしいんです。このヒモナスは、じつは中華料理店からのオーダーで作り始めたもの。本場中国では麻婆ナスといえば、このヒモナスなのだそうです。試してみたら実がとろとろで絶品の麻婆ナスを味わえました。

深町 貴子さんからのアドバイス 暑いベランダ栽培では生育がスピーディーな「極早生種」「早生種」を

わが家の野菜作りは、ベランダでのプランター栽培がメインです。夏は太陽の光が当たって地面が高温になり、土の温度も上がって株も疲れがち。そのため、トマトやキュウリなどの果菜類を栽培する場合は、短期決戦をポイントに品種を選ぶようにしています。例えば、生育がスピーディーで、早く収穫できる「極早生種」や「早生種」を選ぶことが多いですね。栽培期間が短い分、病害虫の被害にあうリスクも減るので、初心者でも失敗が少ないのがメリットです。
また、キュウリやスイカなどのつる性野菜を栽培する際は、あんどん支柱を使ってつるをらせん状に巻き付け、背丈を低く抑えるのがコツです。全体をコンパクトにまとめることで、風雨の影響を最小限に抑えることができます。

ベランダの過酷な環境でも、たわわな実がついた中玉トマト。ベランダの過酷な環境でも、たわわな実がついた中玉トマト。

深町 貴子さん
園芸家。有限会社タカ・グリーンフィールズ専務取締役。東京農業大学短期大学非常勤講師。NHK趣味の園芸「やさいの時間」などのテレビ出演のほか、セミナーや講演会などで野菜作りの楽しさを分かりやすく伝えている。

生育が早くたわわに実る育てやすいミニトマト

ミニトマト「ペペ」
まん丸の小さい実が鈴なりにつき、たくさんとれるので育てがいがあります。極早生なので生育がスピーディーで、上段の実の色づきも早いです。病気に強く、プランターでも栽培が容易なため初心者でも失敗しにくいです。味の濃い甘い実が次々ととれて、初夏から楽しめますよ。

病気に強くプランターでも安心して栽培できる

キュウリ「夏すずみ」
プランターでキュウリを育てる時は、病気に対する強さを基準に選ぶことが多いです。特に、葉がうっすらと白くなるうどんこ病にかかると収穫量がガクッと落ちるので、耐病性は品種選びの大きなポイントです。
「夏すずみ」は病気に強く、初心者でも安心して育てられるのが魅力。とても信頼できる品種です。

つるがぐんぐん生長育てやすくて味も抜群

小玉スイカ「紅しずく」
小玉スイカは、わが家のプランターでもよく栽培します。「紅しずく」はつるの伸びがよく、丈夫なのでお気に入りの品種の一つ。直径の大きいプランターに大きめのあんどん支柱を立てて、つるを低めに誘引して育てます。
1株から2果収穫できるのもうれしく、とっても甘い実に毎回感激しています。

藤田 智さんからのアドバイス おいしさや甘さをアピールした品種で完熟のおいしさを楽しんで

家庭菜園の醍醐味は、とれたて完熟のおいしさを味わえること。おいしさ、甘さをアピールした品種なら、その喜びはさらにアップします。食味のよい品種を選んで、旬の野菜のおいしさを存分に味わってください。
また、初めて野菜作りにチャレンジする方なら、栽培期間が短い早生系の品種がおすすめ。生長が早く、病害虫の被害がピークとなる前に収穫できるので、作りやすくて失敗しにくくなります。初収穫の喜びを味わうにはうってつけです。
野菜の種類を問わず肝心なのは、タネまき、植え付け後の初期生育です。病気や害虫、寒さなどによってダメージを受けると、その後の生育に差が出ます。害虫被害の多い野菜はネットをかけて予防し、寒さに弱い果菜類の苗はホットキャップなどをかぶせて保温しましょう。

畑で育てたとれたての野菜は格別。食味のよい品種を選んでおいしさを楽しみましょう。畑で育てたとれたての野菜は格別。食味のよい品種を選んでおいしさを楽しみましょう。

藤田 智さん
恵泉女学園大学人間社会学部教授。岩手大学農学部を卒業後、同大学院修了。分かりやすくユーモアあふれるトークで、NHK趣味の園芸「やさいの時間」の講師をはじめ、テレビや雑誌などで幅広く活躍。

甘くてホックホク!作りやすい早生種

カボチャ「ほっこりえびす」
うどんこ病と暑さに強く、しかも短期間でできることから、ビギナーに最適の品種です。授粉日から40〜45日が経過し、へたがコルク状になったら収穫します。子づる3本支立てで1株で6〜9個もとれますよ。収穫したら、すぐに食べずに冷暗所に3〜4週間保存すると、でんぷんが糖分に変わって甘くなります。粉質でホクホクとした食感は煮物にぴったりです。

小カブから中・大カブまでいつでもとれておいしい

カブ「耐病ひかり」
根の直径5〜6cmの小カブから、15cm以上の大カブまで、好みの大きさで収穫することができます。ス入りが遅く、取り遅れの心配がないので家庭菜園向き。肉質はやわらかでほんのりと甘く、サラダにも最適です。タネを条まきし、数回の間引きでしっかり株間を広げて、根を太らせます。間引き菜もおいしいので、ぜひ食べてくださいね。

コクとうまみがギュッ!秋までどっさりとれる

トマト「桃太郎8」
真っ赤に完熟させてからトマトを味わえるのは、家庭菜園の醍醐味です。「桃太郎8」は甘みが強く、コクとうまみがギュッと詰まっています。
暑さに強くて作りやすく、生育初期から秋まで草勢が衰えず、上段までよい実がつきます。主枝を摘芯せず、つるをおろして長く楽しむのがおすすめです。雨よけをすると、さらに高糖度の実が収穫できますよ。

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