秋冬野菜の作付け計画
夏野菜の収穫もピークを過ぎると、秋冬野菜のスタートですね。この時期の家庭菜園は、夏野菜の片づけや、まだ収穫できる野菜の管理、秋冬野菜のタネまきなどで大忙し!タイミングを逃さないよう、しっかり移行作業を行いましょう。
春夏~秋冬の野菜が同時進行 夏の終わりは忙しい!
夏から秋への季節の変わり目は、春夏野菜と秋冬野菜の入れ替えの時期。家庭菜園にとっては最も忙しく、重要な時期です。夏野菜は収穫のピークを過ぎて少しずつ収量が減ってくるので、切り上げ時を見極めて片づけを進めます。
10月半ばまで収穫が続くナスやピーマンは、追肥で草勢を維持します。高温と乾燥は、野菜にとっては過酷な環境です。一部の野菜を除いて生育が停滞し、病害虫が発生しやすくなります。土壌由来の病気や害虫が発生した畑では、土壌消毒などで土をリセットするとよいでしょう。
一方、秋冬野菜の準備も着実に進みます。真っ先に始まるのは、梅雨明け前後のキャベツ類とニンジンのタネまき。真夏の育苗は暑さと害虫が大敵なので、寒冷紗など防虫ネットの被覆と適切な水やりで、健全なよい苗を作りましょう。次いで、ハクサイ、ダイコン、コマツナなどのタネまきが進み、ホウレンソウやカブは暑さが落ち着いた9月中旬以降にまきます(下表参照)。
秋冬野菜は、作付けは暑い時期ですが、収穫するころには気温が低くなっているのが特徴です。作付けが1週間~10日遅れても生育に大きな影響を及ぼすため、適期のタネまきと定植が順調な生育のポイントです。
畑の片付けと秋冬野菜の準備
こうなったら片づけタイミング!
夏野菜の片づけが長引くと秋冬野菜の作付けが遅れてしまいます。草勢が落ちて収量が減ってきたら、移行のタイミングと考えましょう。
●片づけと残渣処理
夏野菜の多くは、8月中下旬が片づけ時です。片づけの際は、茎葉を十分に乾燥させて軽量化するのが重要です。こうすることで処分しやすくなります。
支柱仕立てのトマトやキュウリは、支柱に誘引したまま根を引き抜いて1週間程度放置し、支柱から取り外します。ほかの野菜も、根を引き抜いてその場に倒しておけば、水分が抜け、かさが半分以下になります。スイートコーンの茎葉は、わらの代用品として再利用してもよいでしょう。残渣は穴を掘って埋めるか、地域のゴミ出しルールに従って処分します。
茎葉を片づけた後、マルチがあればはがし、目についた太い根を取り除いて軽く耕しておきます。次の作付けが迫っている時は、すぐに苦土石灰を散布して(1m2当たり100~200g)、土壌酸度を整え、1週間ほどあけてから元肥を施すとよいでしょう。
❶ 雑草や古い根などは取り除く。スコップで30㎝ほどの深さまで掘り起こすと、土の中に空気が入り、通気性や水はけがよくなる。
❷ 苦土石灰を1m2当たり100~200gまく。
❸ 石灰と土壌がよく混ざるようにクワでよく耕す。1週間後、1m2当たり堆肥2㎏、化成肥料を1m2当たり100~200gまいてよく耕し、さらに1週間おいてからタネまきや定植をする。
●秋まで残す野菜の処理
ナス、ピーマンは、暑さで実のつきがやや悪くなるものの、涼しくなると草勢が回復し、10月半ばまで収穫が続きます。ナスは7月下旬~8月上旬に更新剪定と追肥、ピーマンは追肥をして長く楽しみましょう。暑さに強いオクラやニガウリなどは、残暑期も元気に実をつけるので、肥料切れを起こさないよう追肥を続けます。
これらの野菜は10月中旬を目安に片づけて、秋冬野菜に移行します。この時期が、コマツナやホウレンソウなどのタネまきのリミット。これより遅くなると寒さで十分な生長が見込めません。
●湯+ポリマルチで日光消毒
7月下旬~8月下旬の暑さを利用した環境に優しい消毒法です。畝を軽く耕し、全体に熱湯をたっぷりと回しかけます。熱湯が用意できない場合は水でもかまいません。その後、透明のポリマルチを張り、2~3週間放置します。こうすることで、ポリマルチの下は50~60℃の高温になり、病原菌や害虫が死滅します。
●土壌酸度を再調整
前作を片づけた後、石灰をまいてよく耕し、土壌酸度を整えます。石灰不足は野菜の生育を悪くするばかりか、病気などを引き起こす要因になることもあります。改めて酸度を測定し、多くの野菜に適したpH6・0~6・5であることを確認すれば、よりていねいです。野菜の好適pHは品目によって違うので、酸性土壌が苦手なホウレンソウやエンドウ、ソラマメなどはpH6・5~7・0に、アルカリ性土壌に弱いジャガイモはpH5・5~6・0に調整するとよいでしょう。
●秋冬の畑づくりのポイント
深くていねいに耕す「深耕精耕」が基本です。特に、ダイコンやニンジンなどの根菜類は、根が土の塊や異物などに当たると二股になったり形が悪くなることがあるので、約30cmの深さまでしっかりと耕します。春夏に作物を植えた畑は、畝の土はやわらかく、通路の土は踏み固められています。かたい通路を耕すのは大変なので、前作の畝をそのまま秋冬野菜に使い回すのも一つの手です。
7~9月
害虫対策
基本は防虫ネットで初期のうちに対処
秋冬野菜はアブラナ科が多く、害虫はほぼ共通します。主な害虫は、アオムシ、ヨトウムシ、コナガ、キスジノミハムシ、アブラムシなどです。防除するには、タネまきや植え付けの直後から寒冷紗など防虫ネットをトンネル状にかけて、ネットにすき間ができないよう端をしっかり土に埋めます。しかし、ネットの外側からネットに接する葉に産卵することがあるので、害虫が内部で大繁殖しないように時々様子を観察してください。ネットを外すのは、野菜がネットの天井に届くほどに生長した時か、収穫の1週間前です。
ネットをかけずに栽培する場合は、葉に虫食いの穴を見つけたら初期のうちに探して捕殺するか、適用のある農薬を散布します。
9~10月
台風対策
台風の前と後の手当てが大事
秋口は長雨や台風など、天候が変化しやすい時期。作付けたばかりの野菜は弱く風雨で傷みやすくなっているので、台風対策を施しましょう。寒冷紗のトンネルがけをすると、ネットが風雨の勢いをやわらげます。また、株元への土寄せも効果的。マルチがはがれそうな所は土を盛り直しましょう。また、株の水没を避けるため、水がたまりやすい場所は排水溝をつくって水を誘導します。収穫が続くナスやピーマンは、支柱をしっかり差し、枝を支柱に誘引します。
風雨が去った後は、畑の様子を点検。土が乾くのを待って畝を作り直し、中耕・土寄せします。病原菌は茎葉の傷んだ傷口から入り込むので、異状を見つけたらすぐに対処しましょう。
野菜別 タネまき・定植ポイント
藤田先生おすすめ品種
タネは極めて乾燥に弱いため、タネまき後に乾かさないことがポイントです。好光性種子なのでタネにかける土はごく薄くし、上からもみ殻をまいたり不織布によるベタがけで保湿に努め、発芽するまで毎日水やりします。発芽不良に悩む場合は、まきやすいように加工されたペレット種子を使うのもよいでしょう。
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向陽二号
土質を選ばず栽培できて、幅広い作型に適する。排水不良などによるしみ病に耐病性がある。根は尻部までよく太り、形のよい円筒形になる。
ここがオススメ!晩抽性で、トウ立ちを気にせず栽培できるのがうれしいですね。暑さに強くて作りやすく、根のつややかさが魅力です。
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陽州五寸®
耐寒性に優れ、畑に長く置いても高品質をキープするので、収穫適期が長くなる。病気に強くて作りやすく、肌・芯ともきれいな鮮紅色。
ここがオススメ!夏まき冬どりで、トウ立ちが始まる翌年2月まで長く収穫が楽しめます。低温下でも根の肥大がよく、品質は上々です。
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Dr.カロテン5
芯まで鮮やかなオレンジ色。甘みが濃厚でニンジン独特の臭いが少ないため、ニンジン嫌いの方にもおすすめ。生育旺盛で葉の伸びがよく、作りやすい。
ここがオススメ!甘みが強くて、カロテンたっぷりのおいしいニンジンです。ジュースにするとその持ち味を特に味わえます。草勢が強く、根の肥大性は抜群です。
管理のしやすいポットまきがおすすめ。9cmポットに4~5粒のタネをまき、生育に応じて2本から1本に間引きます。間引きのたびに化成肥料を1ポット当たり1gを追肥します。育苗期間中は高温のうえ害虫が多い時期なので、タネまきの直後から植え付け適期になるまで寒冷紗など防虫ネットをかけておくとよいでしょう。ネットには軽い遮光効果もあります。
土づくりは、畝の中央に溝を掘って元肥を投入する作条施肥が向いています。栽培期間が長いので、肥料分を集中させるためです。アブラムシ、コナガ、ヨトウムシ、アオムシなどの害虫の被害を受けやすいので、植え穴にオルトラン粒剤などをまいてから植え付けると、残暑期の害虫予防になります。
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彩音®
萎黄病に抵抗性、黒腐れ病に耐病性をもち、生育旺盛で作りやすい。トウ立ちが遅く、低温下でも球の肥大が進む。寒くなるほど甘くなる。
ここがオススメ!じっくり育つおいしい中晩生種。収穫期間が長く、年明けから春まで楽しめます。シャキシャキとして、強い甘みが特長です。
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初秋
味のよさが人気のロングセラー。葉質はやわらかでみずみずしく、歯切れがよい。暑さに強く、高温時でもしっかり結球するので、初心者でも失敗しにくい。
ここがオススメ!初心者には栽培期間が短いものがおすすめ。「初秋」は、その名の通り10月に収穫できる極早生種で、家庭菜園に最適です。
株間をしっかりあけるため、タネを点まきにするのが一般的。株間30cmが基本で、ミニダイコンは15~20cmでもよいでしょう。害虫が多いので、芽が出た時から要注意。寒冷紗など防虫ネットで予防します。
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YRくらま
年内どりが基本で、萎黄病やウイルス病に強いのが特徴。ス入りが遅く、肉質は極めて良好。やわらかでみずみずしく、用途を選ばない。
ここがオススメ!首元の青から白になるまでの肩の部分の形がよく、根肌も滑らか。萎黄病に抵抗性をもち、作りやすくておいしいですよ。
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耐病総太り®
多用途に向く万能ダイコンで、秋まきダイコンの中では人気ナンバー1。12月から2月までと収穫期間が長く、高品質のダイコンがとれる。春まきもできる。
ここがオススメ!青首ダイコンブームの火つけ役となった名品種です。ス入りが遅くて作りやすく、味がよいのが長く愛される理由でしょう。
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三太郎
トウ立ちが安定しているので、春と秋にタネまきできて、夏以外はいつでも収穫できる。標準的な長さは20~30cmで、プランター栽培にも向く。
ここがオススメ!株間や条間を変えることで、0.5~3㎏まで好みの大きさに育てられます。ビギナーからベテランまで楽しめます。
秋冬野菜の中では、生育が最もデリケート。早まきは軟腐病などの病気にかかりやすく、遅まきは結球しない恐れがあるので、地域のタネまきと植え付けの適期を守ることが大事です。
葉がやわらかいハクサイは、害虫や病気が多いのが特徴。9cmポットにタネをまいて育苗すれば、清潔な培養土で苗作りができ、育苗期間中に畑の土をリセットできるという二つのメリットがあります。育苗中は寒冷紗など防虫ネットで覆います。育苗中に1回、化成肥料を1ポット当たり1gを追肥します。
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黄ごころ65
ハクサイ作りで要注意のゴマ症や石灰欠乏症などの生理障害が発生しにくく、よくしまった球ができる。球重約2.5kgで、年内どりが基本。
ここがオススメ!タネまきから65~67日で収穫できる早生種。内部の葉が黄色い黄芯系で、漬け物や煮物にすると彩りがきれいです。
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金将二号®
病気に強いうえに生理障害の発生が少なく、栽培は容易。低温期でも肥大性に優れ、約3kgの高品質な球ができる。昔ながらの白い葉がやわらか。
ここがオススメ!根強い人気のロングセラーです。年内~冬どり向きで、じっくり太る中生種。寒さに当たると甘みが増しておいしくなります。
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晴黄85
耐寒性と低温結球性に優れるうえ、病気と生理障害にも強い無敵のハクサイ。栽培適期の幅が広いのもポイント。球内は鮮やかな黄色で、食味は良好。
ここがオススメ!ハクサイは病気にかかりやすいので、耐病性、抵抗性をもつ品種は貴重です。タネまきから収穫まで約85日の中生種です。
ホウレンソウは土のpHや温度に敏感です。石灰を散布してpH6・5~7・0の弱酸性に整えます。暑さに弱いですが、品種によっては8月中旬からまけるものもあります。
高温期に発芽しやすくする工夫もあります。「催芽まき」は、タネを水につけて十分吸水させ、ビニール袋に包んで冷蔵庫で2~3日冷やし、白い根が出始めたタネを畑にまく方法で、発芽適温と気温に差がある時に効果的です。
❶ タネを一昼夜水に浸す。
❷ タネを水切りして取り出し、湿った布で包む。
❸ ビニール袋に入れて冷蔵庫で2~3日冷やす。
❹ 根が1mmほど出てきたらまく。
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弁天丸®
目によいルテインが豊富に含まれ、栄養成分が高いことからも、プロから家庭菜園まで幅広い人気を誇る。葉柄はしなやかで折れにくい。
ここがオススメ!べと病への抵抗性は最高レベルで、幅広い適応力があります。味にくせがなく甘みがあり、寒じめにすると甘みが一層増します。
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強力オーライ®
暑さに強いうえ、低温期の生育も旺盛なので、8月下旬~翌年2月までタネまきできて栽培しやすい。肉厚の葉は食味がよく、地際の根は赤くて甘い。
ここがオススメ!ホウレンソウの旬は秋から冬にかけてで、秋冬どりの定番品種です。葉はやわらかで甘みがあり、葉柄はシャキシャキです。
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早生サラダあかり
赤い葉柄が美しいホウレンソウ。低温でも生育がよく、秋冬どりに向く。株張りがよく、葉の枚数が多い。アントシアニンの赤色はゆでると緑になる。
ここがオススメ!ベビーリーフから標準サイズまで、いつでも収穫OK。アクが少ないので、サラダなどに加えると葉柄の赤色が生きます。
- 藤田 智
- 恵泉女学園大学人間社会学部教授。NHKテレビ趣味の園芸「やさいの時間」の講師などでも活躍。